上尾市の談合に絡んだ老人たち
「引き際」というものはあっていい。2017年10月31日、新聞の一面に「上尾市長と議長 逮捕 市発注事業、入札妨害の疑い」(東京新聞)という記事が出た。事件の要点は、数十万円と引き換えに、公共事業の予定価格や最低制限価格を入札に参加する業者へ漏洩した──というもの。よくある汚職の一種なのだが、官製談合防止法違反、公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された登場人物4人を見て少し驚いた。
●上尾市長・島村穣容疑者(74)
●上尾市議会議長・田中守容疑者(72)
●設備管理会社社長・山田明容疑者(82)
●同社事務員・伊藤禎甫容疑者(74)
田中議長が会社側から数十万円のカネを受け取り、島村市長(辞職)が田中議長(同)に情報を流していた。埼玉新聞(10月30日)によると「県警は、島村容疑者にも現金が流れていなかったか、慎重に調べる方針」とのこと。
いい年してるんだから、いい加減がめつい人生送ってるんじゃねーよ。いつまでも権力の座に居座り続けるんじゃねーよ、と思ったのだ。島村容疑者と田中容疑者が市政において権力を持っているのは言わずもがな。そして、山田容疑者と伊藤容疑者もその権力者と会食をする関係にあり、権力に近い場所にいた。しかも、山田容疑者の会社は上尾市の「入札参加停止情報」のリストにまで載っている。「契約違反」をしたということで2015年に2カ月間、入札への参加を禁止されていたのだ。そんな過去がある業者であるにもかかわらず、市長と市議会議長は彼らに便宜を図ろうとしたわけである。
「老害」が手にしていた報酬の額
こうした構図を見ると、引き際の重要性をしみじみと感じてしまう。設備管理会社社長の山田容疑者については、なんとか従業員を食わせていこうと老体に鞭打ち、社長業を続けていたのかもしれない。が、82歳にまでなって逮捕されるような人生とは、なんとも惨めだ。ていうか、まともな後継者くらい育てておけよ……とも思う。そんなふうに、若干の憐れみも覚えてしまうが、不正は不正である。
一方、市長の島村容疑者と市議会議長の田中容疑者に対しては、もはや「老害」としか感じられない。自らが持つ権力を利用し、数十万円のカネ欲しさに法律違反をしゃーしゃーとやってのける。上尾市が公表している2016年4月1日現在のデータによると、市長の月給は90万円で期末手当(ボーナス)は4.2カ月分である。となれば、年間報酬は1458万円。議長は同様に月額50万5000円(議員は43万5000円)で、ボーナスも4.2カ月分。これは818万1000円だ。島村市長は2008年初当選の3期目。田中議長は1999年初当選の5期目。ちなみに市長の退職金は1738万8000円である。
「市民の幸せな暮らしのために邁進します!」などとやっている市長・議長なのだから、そもそもこうして金額をあげつらうまでもなく、どんな不正であろうと許されるわけがない。だが、高給をもらっている上に、さらに賄賂までもらうとはどれだけがめついのか、とつくづくあきれてしまう。