「核兵器は悪」という大前提に流されない議論を!

それでも、このように事前に知ることが困難な軍事力の均衡状態を唯一認識できるたった一つのポイント・状態というものは存在する。それは、自分が手出しをすれば自分も必ず死に至るほどの反撃力を相手が持っている状態。そこまでの圧倒的な力を自分も相手も双方が持っている場合には、力の均衡状態を明確に認識することができる。だって自分が手出しすれば自分も必ず死に至るんだったら普通は手出しをしないでしょ。そしてお互いにそういう状態に陥っているのなら、お互いに手出しはしないはず。つまりこのような場合に初めて双方お互いに手出しができないという意味で力の均衡状態が明確になるんだ。

これを国際政治学での安全保障論の世界では「相互確証破壊」という小難しい言葉で表現する。お互いに相手国の存在を確実に消してしまうほどの力を相互に持っていること。自国が相手国に手出しをすれば、自国も確実に完全に消滅させられる状態に相互が置かれている状況。国を人間に置き換えて言えば、お互いにピストルを至近距離で突き付け、そのピストルの引き金にお互いに指をかけている状態。つまりお互いに手出しが全くできない状況。

これは大変な恐怖に満ちた状態だけど、力の均衡は保たれている。これを国家間の関係に当てはめると、核兵器を相互に保有することになるんだ。

通常兵器では、相手国を完全に消滅させるというところまでは簡単には至らない。ゆえに必ず強者と弱者が生まれる。よって力の均衡状態には至らず、何かのきっかけで一方当事国が武力行使を始め得る。つまり相手国に手出しする場合が生じ得る。

ところが、核兵器の場合には相手国を確実に完全に消滅させる。そうするとお互いに核兵器を保有することで力の強弱はなくなる。自国が確実に消滅するリスクが目の前に現れることによって、初めて相手国に全く手出しができなくなる。まさに核兵器を相互に持つことによって、軍事力の均衡状態が生まれる。

以上をまとめると、通常兵器での抑止力=力の均衡を作り出すことは現実的には不可能。軍事力の均衡状態を作り出すには、核兵器による抑止力=力の均衡しかあり得えない。

藤原さんら学者の世界で通常兵器による抑止力=力の均衡が可能と言うのであれば、世界各国がどのような通常兵器をどのように配備・配置すれば均衡状態に達するのかしっかりと具体的に明示すべきだ。藤原さんの持論は、通常兵器による抑止力=力の均衡が可能だという大前提を基に、だからこそ核兵器による抑止力=力の均衡は不要だというロジックだ。もし通常兵器による抑止力=力の均衡が不可能なのであれば、核兵器による抑止力=力の均衡を不要だと安易に主張することは国際政治の専門家として無責任極まりない。国際社会、特にインテリの世界において「核兵器は悪だ」と当然視されている大前提に流されているに過ぎない。(ここまで約3300字、メルマガ本文は約1万5000字です)

(略)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.82(12月5日配信)を一部抜粋し簡略にまとめ直したものです。もっと読みたい方は、メールマガジンで! 今号は《【続く北朝鮮危機(1)】ついにICBM保有宣言! 僕なら動かない事態をこう動かす!》特集です!!

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