ビジネスモデルに徹した議論を

慎重で、失敗を恐れる日本の企業文化は、中国人にある「とりあえずやってみよう」という意識に欠けると思われるかもしれない。だが、戦後の日本にはホンダやソニーといった企業にそういった雰囲気があった。今はそういうマインドを持つ人が、活躍しづらい社会になっているだけなのではないか。

また「日本には技術しかなく、ビジネスモデルが皆無」というわけでもない。例えばトヨタの生産方式は、コストを抑え競争力を上げる強固なビジネスモデルであり、セブン-イレブンに代表されるコンビニエンスストアも、ビジネスモデルでしっかりと利益を出している会社だ。

中国人と話していて圧倒されるのは、ビジネスの話をすると、どうやって確実に利益を出すか・業界内でシェアを伸ばすかという話に徹するがゆえ、結果として議論がシンプルになり、自然とビジネスモデルの話に行き着くということだ。日本の、特に大企業では、新しいビジネスや実験を始めようとしても、先例がないと分かると手を出すのをやめてしまう。また結果を出すこと(金を儲けること)よりも、職場の人間関係や立場を意識する人が多い。ビジネスモデルだけを考えた議論は、中国に比べて少ないと感じる。

しかし本来、ビジネスで大切なのは「結果を出すこと」である。そのためにはベンチャー・大企業を問わず、失敗を恐れることなく「テストと思ってまずやってみる」こと、新しいビジネスモデルに率先してチャレンジしてみることが必要なのではないか。そしてテストの結果を見据え、ビジネスモデルに徹して議論する。こうした日本のビジネスマンが増えてくれば、AIの世界に限らず、日本企業が誇る高度な技術をビジネスに生かせるようになるはずだ。

菅原伸昭(すがはら・のぶあき)
iROHA 共同代表取締役及びオイラーインターナショナル共同代表。1969年生まれ 91年京都大学卒業、日商岩井入社。96年 中国語学短期留学の後、キーエンス入社、1999年台湾現法設立、2001年 中国現法設立、責任者として中国事業拡大に貢献。その後アメリカ法人責任者を経て帰国後、2014年よりTHK 執行役員 事業戦略責任者。2017年より産業用のAIを開発するベンチャー企業を設立、現在に至る。(連絡先:nobu.sugahara@iroha2017.com)