――時代の必然というと?
【加藤】かつては、ひとつの会社でサラリーマンとして頑張って働いていればOKという時代でした。しかし現在は「自身の人生をデザインできる力」が必須になったと思うんです。この「自分の人生をデザインできる力」を、私は「生きる力、活きる力」と呼んでいます。
「生きる力、活きる力」は、さまざまな機会、接点、縁など、さまざまな「en」を持つことで生まれます。これが社名のエンファクトリーの由来にもなっています。そして、弊社で専業禁止を打ち出したのは、「生きる力、活きる力」を養うための機会を提供するためでした。
「本業が複数ある」という働き方
【加藤】当社では副業を「複業-主業」として捉えています。これまでは「本業-副業」のように、本業があって、副業は小遣い稼ぎという位置づけが多かったと思います。当社のいう副業とは「複業」、つまり「主業が複数ある」というイメージです。ただし、副業そのものは手段であり、目的ではありません。言ってしまうと、専業禁止は単なる「バズワード」。そもそも専業禁止を制度化することは難しいですし、実際のところ、厳密に禁止はできないですよね。
――そうですか。やはり「専業禁止」は、社内で共有している考え方、あるいは社の理念であって制度ではないのですね。たしかにエンファクトリーとの雇用契約とは別に同社または他社と業務委託契約を結べば、「複業」は可能とはいえ、「専業禁止」とはまた別の話です。人事制度の面から見ても、専業禁止を制度化するとなると、専業する自由や権利を奪うことにもなりかない。しかし、メッセージとしては強烈ですし、意味がありますね。
【加藤】ええ。ただ、ひとつだけルールを定めています。副業をする場合は、その情報を会社に対してオープンにするということ。オープンにすることで、エンファクトリーの仕事をおろそかにすることができなくなる、副業をしていない社員にとっても刺激になる。そうすることで、副業にチャレンジする社員と会社、社員間に「正のスパイラル」が生まれるんです。
――なるほど。「専業禁止」を強く打ち出し、あえて副業を勧めることで、エンファクトリーでの仕事を磨くことになるわけですね。ほかにもメリットはありますか?
【加藤】そうですね。企業勤めのサラリーマンの収入は、将来に向けてますます不確実、不透明になっています。しかも福祉や医療などへのコストはさらに増大する恐れがある。そうなると複数の稼ぎ口を持っておければ、突然収入がなくなるというリスクを分散することができるはずです。