それに、大企業に勤めるビジネスパーソンでも、30歳くらいになれば、その組織における将来のポジションは分かってくるはずです。そんな環境において、自分のいま働いている企業以外のところで、自分で仕事をとってきて、回してみて、その分の税金を払って、というような経験を積むことは、自らの「生きる力、活きる力」を活性化させます。副業は、将来に向けて自分の人生をデザインしていくという「感覚」を養うことにつながるはずです。

デメリットは「ありません」

――では、実際に副業で活躍している人材はいるのですか?

【加藤】社員30名のうち、12~13名は副業をしています。特に活躍している社員は、テレビでコメンテーターなどもしていますから、もしかしたらご覧になったことがある人もいるかもしれません。

――たとえば同社のサービスディレクターである高荷智也氏は、備え・防災アドバイザー/BCPコンサルタントとして、防災に関する講演や執筆、コンサルティング、WEBメディアやECサイトを運営している。また、カスタマーサポートを担当する山崎俊彦氏は、パグやフレンチブルドッグなど短鼻の犬種に的を絞った犬用の手作りグッズ・洋服のインターネット販売を手がけている。そしてエンファクトリーの副社長である清水正樹氏は、動物(ハリネズミ)カフェ運営、ギフトカードシステム提供、新規事業コンサルティング業務を手がけている。冒頭でコメントを紹介した藤生氏によれば、なかには副業の稼ぎが本業の稼ぎを上回ることがある社員もいるそうだ。

――専業禁止を打ち出して6年間。副業にデメリットを感じるところはありませんか? せっかく育成コストをかけた人材が、他社でその能力を利用したり、独立したりすることもあるわけですよね。

【加藤】うーん。よく聞かれるんですよね。でも、正直、デメリットは何も感じないんですよ。副業が主業となり、当社から独立していった社員とは、業務提携すればいいわけですから。独立できるくらいの能力がある社員、自分で活きる力をデザインできる人と働けたほうが、結局、メリットは大きいじゃないですか。

いずれにせよ、これからの企業価値に占める、価値ある資産の比重は、ますます無形資産、つまり人的関連資産に移っていきます。弊社としては、人的関連資産の在り方を「持続・断続・適時」として考え、常に個人と会社、双方にとってプラスになるような関係性の構築を目指してきましたし、これからも突き詰めて行きたいと考えています。