人事施策の転換で現れる「5箇条」
筆者は常々、これから会社と社員の関係は大きく変わると述べてきた。そして人事施策の転換にともなう関係性の変化は、具体的に次の5箇条に表れるとした。
・兼業奨励
・休暇奨励
・残業なし
・異動なし
・定年なし
詳しくは拙著『日系・外資系一流企業の元人事マンです。じつは入社時点であなたのキャリアパスはほぼ会社によって決められていますが、それでも幸せなビジネスライフの送り方を提案しましょう。』(すばる舎リンケージ)をご覧いただきたい。エンファクトリー社の「専業禁止」は、この兼業奨励が進んだカタチだと言える。
加藤氏に「副業の定義や範囲をどう捉えているか?」と尋ねたところ、「単にメインの働き口を補うという意味の『副業』を越えて、『主業』をいくつか持つという意味の『複業』という言葉を使いたい」と応えた。これには筆者も賛同するところだ。
筆者のまわりにも、このように「複業」をしている人材が多くいる。もちろん筆者も複業者の一人としていくつかの企業やエージェントと連携して日々仕事をしている。
そして筆者は、大企業で働くビジネスパーソンにも、文字通りの「副業」やそれをさらに推し進めた「複業」にチャレンジしてもらいたいと考えている。
最初から副業ではなくまずは実務能力を
だが、副業をはじめる時期には条件がある。
それは、最低でも入社後3年間は副業を控えたほうがよいということだ。願わくば30歳くらいまではわき目もふらずに目の前の仕事に没頭してほしい。
それはなぜか? 新卒で入社して30歳を迎えるころまでは、実務能力を開発することを何より優先してほしいからだ。ビジネスパーソンにとって必須の実務能力を育まずに副業をはじめると、のちのち足をすくわれたり、壁にぶち当たったりすることになる。
新人または若手社員といわれる3年間に実務能力を鍛えておかないと、以降のキャリアがきつくなる。日本の人事システムでは、入社して3年が過ぎるころには自動的に昇格する。そのときは実務能力とはまた別の能力(ヒューマンスキルなど)で勝負しなければならなくなる。
新たなステージで、いくらヒューマンスキルを磨こうとしても、ベースに実務能力がなければ、「単なる口八丁手八丁の人」になってしまうのだ。