ただそこは読売社説。次に「我が国は今、デフレ脱却、財政再建、北朝鮮の核・ミサイルなど様々な課題に直面している」「今の野党に日本の舵取りを任せることはできない。政策を遂行する総合力を有する安倍政権の継続が最も現実的な選択肢だ。有権者はそう判断したと言えよう」とうまく安倍政権を擁護する主張を展開している。
それなりにバランスを取る読売社説
そうかと思えば、きちんとこう批判もするし、注文もする。
「公示直後の世論調査で、内閣支持率は不支持率を下回った。首相は、自らの政策や政治姿勢が無条件で信任されたと考えるべきであるまい。与党の政権担当能力が支持されたのは確かだが、野党の敵失に救われた面も大きい」
「安倍政権の驕りが再び目につけば、国民の支持が一気に離れてもおかしくない。首相は、丁寧かつ謙虚な政権運営を心がけ、多様な政策課題を前に進めることで国民の期待に応えねばなるまい」
今年5月から6月にかけ、読売新聞は獣医学部の新設をめぐる加計学園問題の報道で安倍政権の擁護を繰り返し、相当の読者から抗議を受けた。それだけに社説は評価と批判のバランスを取るようになったのかもしれない。読売新聞の根っこは、安倍政権擁護の保守である。これからどんな論陣を張るのか、まだ見通せないが、この社説はそれなりにバランスが取れている。
「『一枚看板』の小池氏の人気に依存」
読売社説は野党の躍進と衰退も分析し、注文を付けている。
立憲民主党については「当初、希望の党に合流できない民進党の左派・リベラル系議員の受け皿として出発したが、安倍政権に批判的な層に幅広く浸透し、躍進を果たした」と分析したうえで、「今後、民進系の無所属議員らと連携する可能性がある。政府・与党に何でも反対する『抵抗政党』に陥らず、建設的な論戦を仕掛けることが求められよう」と注文する。
一方、希望の党に対しては「安全保障関連法を容認し、安保政策で自民党と差のない保守系野党を目指す姿勢は、評価できる。従来の不毛な安保論争に終止符を打つことは重要だ」とその政策を認める。
さらに「希望の党は一時、政権獲得を目指す構えだった。だが、小池代表の民進党からの合流組への『排除』発言などで失速した後は、盛り返せず、苦戦した。消費増税凍結、30年の原発ゼロなど、付け焼き刃の政策は具体性を欠いた。『しがらみのない政治』の名の下、政治経験の乏しい新人の大量擁立も疑問視された」と厳しく書く。
そのうえで「組織基盤がなく、『一枚看板』の小池氏の人気に依存した新党の構造的な脆さを印象づけた。小池氏の地元の東京で振るわず、全国でも当選者の大半を民進党の移籍組が占めた。小池氏の求心力低下は避けられまい」と指摘する。
読売社説が、安倍首相や安倍政権に対してもここまで注文したり、厳しく批判したりできれば、たいしたものだと思うのだが、どうだろうか。