新任課長の心構えを海軍「士官心得」で学ぶ

歴代の上司や先輩を振り返ってみると、マナーに厳しい人もいれば、まったく放任の人もいました。当社には、入社数年目の先輩が新入社員の面倒を見るインストラクター制度があります。私が入社したときの担当インストラクターは、放任主義。おかげで私はのびのびやらせていただきました。一方、私の次の年に入った新入社員の担当は、箸の上げ下げまで細かく指導するタイプでした。

人によってばらつきがあるのはよくないと思われるかもしれませんが、私は人それぞれでいいと考えています。新任の課長や部店長には、「自分の価値観、人生観で部下を染めていい」と言っています。たとえば課長職に昇進したのは、その人のそれまでの価値観が正しくて、結果が出たから。1つ上のステージに上がってからも同じ価値観で通用するかどうかはわかりませんが、キャプテン病になって「責任ある立場になったからいままでの考えを変えよう」と自分を見失うよりいい。全員が均一である必要はなく、それぞれのやり方で礼儀やマナーを教えていけばいいのです。

ちなみに私は細かいほうかもしれません。たとえば社内の飲み会でも、いい加減なのはダメ。「社内だから無礼講でいいじゃないか」と言われますが、普段からいい加減なことをしていると、それがクセになってお客様先でも出てしまう。そうならないように、普段から意識して血肉になるまで刷り込む必要があります。

部店長のころは新任課長に『現代組織に活かす 海軍の「士官心得」』という本を買って読ませていました。この本には幹部候補としての心構えのほか、身だしなみなどの具体的なマナーがあげられていました。上席に承認の印鑑をもらいにいくときは朱肉の蓋を開けて渡すなど、かなり細かい内容です。相手を慮る気持ちがあれば、自然にそうした振る舞いになるでしょう。時代こそ違えど、本質的な部分はいまも同じはずです。

口うるさく言うのは、正直、嫌ですよ。言えば言うほど嫌われて、評判が落ちますから(笑)。でも、誰かが教えないと本人のためにならない。注意をどう受け止めるのかは本人次第です。少なくても気づく機会を与えることが上司の役目ではないでしょうか。

▼永井CEOの作法
1 年賀状はどうしているか(枚数など)
仕事は数え切れず。プライベートは200枚弱。
2 普段のお礼状はどうしているか
必ず出す。状況に合わせたワンフレーズを入れて。
3 仕事絡みのゴルフはするか
出張時を除き、プライベートも入れるとほぼ毎週。
4 日常の勤務時、ネクタイはするか
クールビズを除いてする。勝負ネクタイは、社章の柄の一本。
5 会食の回数
ほぼ毎日。
6 服は誰が選ぶか
自分で選ぶ。
7 初対面の相手で見るところ
相手への気遣い。
永井浩二(ながい・こうじ) 1959年、東京都生まれ。81年中央大学法学部卒業後、野村証券に入社。事業法人一部長、京都支店長などを経て2012年8月より社長兼野村HDグループCEO。17年4月より代表執行役社長グループCEOに。
 
(構成=村上 敬 撮影=市来朋久)
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