人は機械との競争に打ち勝てるか

最低賃金15ドル(1650円)への対応が迫られるアメリカの小売業・外食産業でも、さまざまな対策が進められているようです。例えば、顧客からのチップをサービス料として店側が受け取り、賃金の引き上げに充てる。注文は店員ではなくタブレットなど機械で行い、レジもセルフで自動化する。あるいは、店舗にスタッフを置かず、自動販売機に切り替える、といった試みです。

日本でも、スーパーに加え、コンビニへのセルフレジ導入の動きも始まっています。ガソリンスタンドがセルフ店舗に切り替わり、高速道路の料金所はETCレーンが中心となり、電車や映画のチケット購入はスマホと無人機で完了する時代です。

このように見てみると、最低賃金1000円時代は、必ずしも働く側にとって喜ばしいことばかりとはいえません。最低賃金が上がることで、「賃金が高いから、機械に置き換えよう」とか「人件費がまかなえないから、店をたたもう」といった事例が増えると予想されるからです。

今後AIが発達すれば、さらにこうした傾向が強まるでしょう。三菱UFJフィナンシャル・グループは、国内従業員の約30%に相当する9500人分の労働量を、事務作業の自動化やデジタル化で削減する方針を明らかにしています。余った従業員はクリエーティブな仕事に振り向けるということですが、そんなことが簡単にできるとは思えません。メガバンクですらこうなのですから、もう安泰の企業や職業はない、ということかもしれません。

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