諌山氏は、怒りっぽいことで人望がない人を「グリップ力が弱い」と指摘する。

「部下や同僚の心をつかむ力が小さい、ということです。グリップ力が弱い人には、みんな、心をさらけ出して話そうとしません。知らないうちにお山の大将になっていることが多いんです。みんなが知っている情報を一人だけ知らないということが起こります。ある企業の係長が、部下が消費者金融に借金をしているのを把握しておらず、大問題になったという事例もあります」

「叱咤」で現場が復活した例も

怒りっぽいと、社内のコミュニケーションにも問題が生じる。しかし、誰かに苦言を呈さなければならないときもある。そういったときには「人に対して怒るのではなく、問題自体を解決するスタンスで臨むべき」と村上氏は言う。

「これは某大手販売店での話です。当時、営業部の成績が極端に下がってしまっていて、部長からは連日のように各店舗に強い叱咤が飛んでいました。しかし、頭ごなしの叱咤はときに罵倒に近く、現場の士気は下がるばかりで、成績は一向に上がらなかった。それを見かねた新任の役員がある日その部長に、『部下を怒鳴って問題解決すれば苦労はしない。好調店を分析して、そのやり方を展開すること』と指示したところ、数カ月のうちにみるみる業績が回復。まさに、視点を変えたことで成功したケースだといえます」

その役員は後に、他社でトップに就き、存分にリーダーシップを発揮しているという。

イライラは、人間関係の構築を阻み、ビジネスパーソンとしての信頼を失う。肝に銘じて過ごしたい。

諌山敏明
アチーブ人財育成代表。住友生命保険相互会社で人材開発、人材派遣会社で経営管理部長兼人事部長を努める。2012年独立。著書に『男性管理職のための女性部下マネジメント』(幻冬舎)。
 

村上賀厚
ノリ・コーポレーション代表。フォードジャパン人事課長、ロイタージャパン人事本部長などを経て2006年独立。著書に『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』(東洋経済新報社)。
 
(写真=Getty Images)
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