消費税率を下げれば、デフレから脱却できる
日本の財政は、いまや実質的に無借金であると書いたら、信じてくれる人は少ないかもしれません。しかし、それは財務省自身が発表している統計で明らかなのです。
財務省が2016年3月に発表した連結財務書類をみると、2015年3月末で、政府が抱えている広義の負債は1371兆円あります。ただし資産も932兆円あるため、差し引きの純債務は439兆円です。ここで言う広義の政府とは、一般会計と特別会計に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人など、政府と密接な関係を持つ組織を含めたものです。このように政府の範囲を広めにとると、日本の純債務はGDPの9割程度ということになります。これは一般的な先進国の債務水準です。ところが、実はもう一つ重要なポイントがあります。
2017年1月10日時点で日銀は国債を411兆円保有していましたが、国債の買い増しを続けた結果、5月末に純債務の金額とほぼ並んだのです。
日銀が保有する国債は、元利の返済が実質不要です。日銀の国債を買い入れるということは、国債を日銀が供給するお金にすり替えることを意味します。日銀券は、元本返済も利払いも不要なので、日銀保有の国債は、借金にカウントする必要がなくなります。それが通貨発行益と呼ばれるものです。政府は、これまで通貨発行益を財源として利用してきませんでした。通貨発行益に依存しすぎると、インフレを起こしてしまうからです。
しかし、実質的に純債務がなくなり、そしてデフレが続いているいまこそ、通貨発行益の一部を活用すべきではないでしょうか。例えば、通貨発行益を活用して消費税率を下げれば、確実にデフレから脱却できるでしょう。
1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。専門は労働経済学と計量経済学。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』『グリコのおもちゃ図鑑』『雇用破壊 三本の毒矢は放たれた』『消費税は下げられる! 借金1000兆円の大嘘を暴く』などがある。