「不完全」が通常の状態

【山里】僕はむしろ、不完全だったり、どうしようもなかったりする自分が、通常の状態なんです。逆に、やる気があってめちゃくちゃ仕事をしている時って、スーパーマリオの“スター状態”だと思っています。だから、その時はめちゃくちゃ頑張る。そして、“スター状態”になれる頻度を上げるにはどうすればいいだろうと考える。

若新雄純さん

【若新】なるほど。普段の自分はあくまで“弱小マリオ”であって、その上で“スター状態”の頻度を上げようと考えるわけですね。山里さんは、「等身大の自分」がぶれないですね。

【山里】こんな人間だし、しょうがない(笑)。

【若新】それって、現代人が他人との比較や嫉妬に苦しむとか、自分が完全体になれないというような悩みから解放されるためにすごく大事なことだと思います。“スター状態”ではない自分がその頻度を上げるために、「スターになる」ことを目指すのではなく、「弱小な自分」を受けいれ、その弱さと戦う方法をマスターする。

そして素晴らしいのは、山里さんはそれによって、「スターではないありのままの自分」を好きになっている。そして、等身大の自分をとことん理解し、楽しみながら「スター頻度」を上げているんですね。

「部分」で負けて「全体」で勝つ

【若新】山里さんは、自分のモチベーションをコントロールするのもすごくうまいと思います。子どもの頃はどうでしたか? 誰にでもコンプレックスがあると思うのですが、昔から自分の複雑な感情とはうまく付き合えていたのでしょうか。それとも、何かのきっかけで受け入れられるようになったんでしょうか。

【山里】子どもの頃は、ほお骨が張っていて、顔が大きいのがイヤでした。昔、よく見ていた夢があるんです。ほお骨の辺りをかいていたら、そこのフタが急に開いて、いろんなものが中から出てくる。「運動できない自分」とか「嫌なもの」が全部外に飛び出して、翌日学校でスターになっている……そんな夢をよく見ましたね。

【若新】まさに潜在的なコンプレックスですね。今は解消できたのでしょうか。