若いお金持ちほど背伸びをする

富裕層にも、もともと資産家の方とビジネスなどで成功してキャッシュフローがたくさんある方、その両方がある方がいます。ファイナンシャル・プランナーという仕事柄、それぞれのタイプのお金持ちにお会いする機会がありますが、資産家の方と、成功してお金持ちになった方とでは、行動や立ち居振る舞いにどこか違いがあるように感じます。

資産家、つまりもともとお金持ちの方々は、上品でガツガツしたところがなく、堅実で謙虚な人が多い。流行のものを次々買うようなことはなさらず、本当にいいものを大切に使っています。おじいさまやおばあさま、ご両親から受け継いだものを大切に使われる人も少なくありません。いいものをこれ見よがしに見せつけたり、ひけらかすこともない。

これに対して、若くしてキャッシュリッチになった人には、背伸びをする人が目立ちます。「周囲の人が持っているから」という理由でハイブランドのバッグや時計を身につけ、高級車をローンで買う。いずれも奥様主導で無理に背伸びをして買うというケースが多い。いずれ生活が立ちゆかなくなったり、下流老人にならないかと心配になることもあります。

「こだわり」への出費は惜しまない

資産家の人たちは、お金に対する考え方も堅実です。キャッシュフローはそれほど潤沢ではなくても、堅実な生き方が身についているため、困ってはいません。運用も過分なリスクを取ることなく、代々受け継がれてきた資産を守ることを重視します。とはいえ、「こだわり」への支出は惜しみません。

あるとき、資産家の奥様に「キャッシュフローがなくて大変なの。アドバイスをしてくれないかしら」とお願いされてお話をうかがったところ、会費が高額な有名テニスクラブの会員権や、あまり使っていない別荘があることがわかりました。ファイナンシャル・プランナーとしては、まっさきに手放してほしい資産です。ところが、「そのクラブは社交の場だから手放せない」「その別荘は夏の社交に必要だから売れない」とおっしゃる。社交といっても、夜な夜な高級なお店をはしごするのではなく、お茶の会やホームパーティをする程度です。ただ、代々続いているものだけに、「それは譲れない」とおっしゃる。本当のお金持ちは、自分たちなりの「こだわり」があり、そこへの出費は惜しまないのです。資産家のお金への考え方を目の当たりにした思いがしました。