37歳の長男はひきこもり。将来が心配だが、持ち家があり、両親は4300万円分の現金と株を相続させるつもりだった。しかしシミュレーションの結果、両親の死後、長男が69歳になったときに貯金が底を突くことがわかった。なぜ、ゆとりの家計は“破綻”するのか? ポイントは、独立し結婚している長女にあった。

37歳長男 ひきこもり生活はすでに13年に及ぶ

関東近郊在住の60代のご夫婦から相談を受けたのは、5月のことでした。ひきこもりで働くことができない長男が、親亡き後も生活していけるかを分析してほしいという依頼でした。

*写真はイメージです

お話をうかがうと、長男は大学卒業後、いったんは会社に就職したものの、対人関係がうまくいかずに1年もたたずに退職してしまったそうです。すぐに次の就職先が見つからず、両親(特に父親)はかなり叱責したとのこと。そのためか、長男は心を閉ざし、部屋に閉じこもりきりになってしまいました。気に入らないことがあると、荒れてしまうので、両親も腫れ物に触るような扱いになってしまい、昼夜逆転した生活がかれこれ13年間も続いています。

現在37歳の長男。さすがに今後、就職して収入を得るのは難しいと感じ、このままの状態で家計がもつのか、専門家に診断してもらいたいというのが、ご相談の理由です。ご主人(父親)は定年再雇用で働いていますが、あと1年ほどで退職となります。その後は夫婦の年金と貯蓄を取り崩しながらの生活となります。ただ、ご主人は比較的収入が多かったこともあり、持ち家(マンション)とある程度の貯蓄があります。ご長男一人になってもなんとか生活していけるのではないかとの期待はあります。

持ち家に加え、資産は預貯金・株合わせて4300万円ある

ご相談では、まずご家族の環境や経済状況をうかがいます。

<家族構成>
父親:63歳 会社員(手取り年収350万円)
母親:62歳 パート主婦(手取り年収96万円)
長男:37歳 無職
長女:35歳 すでに結婚して、近隣に住んでいる

<資産状況>
父親:預貯金、有価証券合計3000万円(退職金はすでに受け取り済み)
   不動産(自宅マンション・住宅ローン払い済み)
母親:預貯金1000万円
長男:預貯金300万円

<支出の状況>(家族3人)
生活費、マンション管理費など、年額400万円

<予想年金額>
父親:厚生年金と合わせて250万円/年
母親:厚生年金と合わせて100万円/年
長男:78万円/年