「食の安全」への道、ミラノで感じた風

2002年5月、スローフーズ課を新設した。いまの農業生産法人・美田の前身で、課員は4人。創業の土台である醤油など古来の醸造技術を学び直し、固定観念にとらわれず、自然食で伝統的な調味料をつくってみたい。前々から脳裏にあったその夢に挑戦するためで、47歳になった翌月だ。

久原本家グループ本社 代表取締役社長 河邉 哲司

4年前にイタリアを訪ねたのが契機となる。ミラノ在住の知人女性が「久原の明太子でスパゲティをつくったら、イタリア人が『美味しい』と喜んだ。売り込みにきなさいよ」と言ってきたので、遠くて気は進まなかったが、独りフランクフルト経由でいった。

明太子の販売は、流通経路がないので無理だと、すぐにわかる。でも、何人か日本人が集まっていたとき、「自然食で伝統的な調味料」の話をすると、1人の男性が「それ、スローフードじゃないですか」と言った。そんな言葉は知らず、尋ねると、イタリア北部のブラという町で始まったある種の社会運動だ、と教えてくれた。