阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震といった大災害はもとより、毎年恒例の風水害を含めて、自治体の危機管理能力に疑問を抱く人は少なくないだろう。ひとたび「想定外」の災害が起これば、幹部から現場の職員まで混乱し、住民の命を危険にさらす。
自治体の危機管理能力はなぜ高まらないのか。それは第1に、現在の防災演習が「筋トレ重視・脳トレ軽視」だからである。自治体は避難所設営なり河川敷での救助などの住民参加型の訓練をやりがちだ。管見の限りでは、こうした地元イベントの運営に自治体の危機管理系職員は忙殺されている。そして、関係機関を巻き込んだ演習訓練、ましてや部内のみの演習でさえほとんどやらない。
たとえば東京都の国民保護訓練は年1回のみ、しかも2時間程度で、防災訓練も年3回程度である。各区の演習もその後の展開がわかっている予定調和式、もしくは予定調和と想定外を折衷した中途半端な形式が多い。しかも、区役所倒壊や橋梁崩壊等のシビアアクシデントを前提にしていない。有事の際、自衛隊等との連携が重要なのは言うまでもないが、他組織を巻き込んだ図上演習の実施も少ない。
だから危機管理部署であってもド素人同然。災害時にどういう問題が起こりえるのかも知らず、「想定外」をたくさん抱えたままだ。年1回、顔を合わすか合わさないかの―人事異動が重なれば面識がない―、それも違う組織の人間同士が修羅場において、連携が取れるはずもない。