ネットで得られるのはまったく役に立たない情報

第2は、そもそも計画がハチャメチャで役に立たないことである。たとえば、皆さんの自治体の防災計画なり国民保護計画をインターネットでご覧いただければ丸わかりだが、ほとんど無茶くちゃな内容である。

たとえば、防衛省のおひざ元、新宿区の国民保護計画を見てみよう。まず、備えるべき武力攻撃事態として「着上陸侵攻」が挙がっている時点で、困惑せざるをえない。着上陸侵攻とは、文字通り、敵の地上戦力が沿岸部等から侵攻してくる事態である。内陸の新宿区まで敵が侵攻してきたのなら、やるべきは、戦闘の継続ではなく、耐えがたきを耐えての無条件降伏だろう。

そして、よりひどいのがNBC(核・生物・化学)兵器攻撃時の対応である。新宿区は、措置に当たる要員に防護服を着用させるとともに、汚染の原因物質の特定や管理に努め、他機関の活動に協力させるとしている。これを現実的な行動案だと受け取る人はいないのではないか。防護服を着た職員を現場に派遣することで何かが解決するとも思えないし、やるべきことはほかにいくらでもあるだろう。そもそも新宿区がNBC兵器に対応した防護服を調達したとは仄聞もしていない。

防衛省を抱え、日本でも有数のテロの脅威にさらされている新宿区でさえ、このありさまだが、厚木基地(綾瀬市)に隣接する厚木市はどうか。ホームページでは、弾道ミサイル警報時に、木造住宅にいる際は、堅牢な建物や地下街等に避難せよと述べている。しかし弾道ミサイルは、警報から3~4分後に弾着する。市の言い分を真に受けた人々が、木造の自宅から避難しようと殺到し、パニックを引き起こすだけだろう。そもそも、防災無線の聞き取りだけでも5分はかかりそうだ。

しかも着弾後は、換気扇を止め、窓を閉め、目張りをしろという。それで生物・化学兵器やミサイル燃料の汚染を防げるのだろうか。

大分県などでは子供の不安解消のためにイスラエルの例を引いて弾道ミサイル攻撃時の玩具持参を勧めているが、ロケット弾が日常的・断続的に降り注ぐイスラエルとわが国の脅威の違いを理解していないとしか言いようがない。

こうした背景には防災計画や特に国民保護計画がやっつけで作られたことがある。今や北朝鮮の脅威が深刻化し、天災も頻発する以上、今こそ、各自治体は諸機関・部局横断の図上演習に積極的に励む「脳トレ」を外部委託も活用する形で実施し、その教訓を踏まえて国民保護計画や防災計画の実質化・改訂を図るべきだ。

(写真=時事通信フォト)
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