裁判も会議も「いい質問」が空気を劇的に変える
2:質問の仕方
裁判員には被告人質問、証人尋問など、自ら手を挙げて質問する機会が与えられる。何度も手を挙げる人もいれば一切質問しない人もいて個性が出るが、いい質問のできる人は話をしっかり聞いているし、場の空気が読めていて参考になるのだ。
そういう人は、事件の詳細について尋ねることはあまりなく、プロ裁判官が質問しないような身近な問いを投げかける。たとえば、強姦犯に対して、「襲いかかるとき、妻や子どもの顔が一瞬でも脳裏をかすめなかったのか」というような質問だ。
被告:「そのときは、特に考えませんでした」
裁判員:「もし捕まったら妻子がどう思うか、とは?」
被告:「考えませんでした」
どうということのないやり取りに思えるかもしれないが、たぶん質問者には妻子がいて、自分が被告人ならどうだったかと考えた末に質問をしたのだ。そこにはリアリティーがあり、他の裁判員が事件を考える材料にもなる。事件そのものというより、犯行時の被告人の心境や、家族についての考え方が端的に伝わるからだ。
▼煮詰まった会議をガラリと変える、ナイスな質問
では、会社の会議ではどうだろうか。
積極的に質問するのはいいけれど、議長や上司が求めているのは数の多さではなく、実のある会議にするための推進力となる質問だろう。プロジェクトの中心メンバーであるがゆえにマニアックな方向にはしりがちな同僚の説明に、話についていける人といけない人が分かれ、温度差が生じているようなとき、違う角度から質問ができたら煮詰まった雰囲気が変わるかもしれない。