5年間無事なら一安心
大腸がんは、好生存率の3要素、「進行が遅い、早期発見できる検査法がある、治療法が確立している」をすべて満たすがんだ。全病期の10年生存率は約7割、がん細胞が腸管粘膜とその下の筋層内にとどまるI期では96.8%と、ほぼ100%に近い。
となると、大腸がんとの付き合い方の大原則は一にも二にも「早期発見・治療」。住民検診や職場検診で「要精密検査」の文字が戻ってきても動揺せずに、速やかに2次検査を受けよう。
2次検査で大腸がんと診断された後は、病期によって治療法が変わる。
がん細胞が粘膜組織内でおとなしくしている段階では、お尻から内視鏡を入れてがん病変を切り取り、治療は“仮”に完了。翌日から普段通りの生活ができる。切り取った組織は病理検査に回され、断端(だんたん)――切片の外周部にがん細胞がないか確認される。一番外側から5ミリ以内にがん細胞がなければ“本”完了だ。仕事に支障を来すこともない。
断端から5ミリ以内にがん細胞が見つかった場合、粘膜層のさらに下までがん細胞が広がり転移の可能性がある。病変を切り取る開腹手術か腹腔鏡切除術の適応だ。
さらに手術で切り取ったリンパ節からがん細胞が見つかると「リンパ節転移あり」の病期III。再発予防を目的に術後の半年間は抗がん剤治療が行われる。リンパ節転移がない病期IIでも再発率は約13%。病期IIIの約30%より低いが、侮れない。術後の抗がん剤治療が必要か、主治医とよく話し合うべきポイントだろう。
抗がん剤治療が一段落すると、再発を監視する定期検査が始まる。再発の約80%は術後3年以内に、95%以上は5年以内に見つかる。術後3年間は3カ月ごとに1回、4~5年目までは半年に1回の検査が必要だ。
大腸がんの5年生存率と10年生存率は、ともに約7割。ほとんど変わらない。5年が無事に過ぎれば、まずは一安心だ。
乳がんも「進行が遅く、検査法と治療法が確立している」がんだ。乳房X線(マンモグラフィ)や超音波検査で「要精密検査」が出た場合は細胞診や組織診を行い、CTでがんの性質や広がり度を確認。そのうえで、手術や放射線治療による局所療法と抗がん剤やホルモン製剤、分子標的薬を使った全身療法を組み合わせた治療方針が決まる。
方針決定まで1、2カ月かかるため、手遅れにならないかと不安に駆られるかもしれないが、乳がんの性質は多種多様。Aさんに効果的だった治療法がBさんにも効くとは限らない。むしろ、急がば回れの精神で最適な治療法を選ぶほうが好結果につながる。