生存率高いが長い付き合いに

病期I~III期は、乳房切除術(+再建術)の後に、外来で抗がん剤やホルモン製剤による再発予防治療が行われる。乳がんの10年生存率は80.4%と悪くない。ただ、乳がん細胞の一部は10年、20年という長い休眠期間を経て再発することが知られている。

このため、初期治療が終了してから3年間は3カ月から半年に1回、5年目以降は毎年1回を目処に、少なくとも10年間は定期検診が必要だ。

乳がんの種類によっては、5年、10年とホルモン製剤を飲み続けることで、再発・死亡リスクが低減されることもわかってきた。

乳がんの「その後」は非常に長い。再発の不安に一喜一憂して憂鬱になることもあるだろう。できる限り、病院や地域の患者・家族会に参加し、悩みや不安を分かち合うことが大切だ。

肺がんは早期発見が難しく、10年生存率は33.2%と平均を下回る。

がん塊が原発巣(最初に発生した部位)にとどまるI期は69.3%だが、リンパ節転移を認めるII期は31.4%と転移の有無が長期生存の分水嶺だ。

同様に10年生存率が低いのが肝がんだ。肝がんの9割はB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)感染が原因。特にHCV感染者の約7割は慢性肝炎へ進行し、そのうちの3割が肝硬変、さらに肝がんを発症する。健康診断でHBV、HCV感染が判明すると定期検査を強く勧められるのはこのためだ。

高リスク者を囲い込む体制がある一方、肝がんの10年生存率は15.3%と低く、5年目以降も生存曲線が下がり続ける。

「肝がんの場合、治療後も発がん母胎の肝硬変が残り発がんスイッチを完全に断ち切ることはできません。一般に治癒の目安とされる5年を過ぎても高率で新たながんが生じます。肝硬変や消化管出血による死亡も少なくない」

国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科長の島田和明氏は、肝がんの特殊性を指摘する。