「在任中の改憲実現」は今や瀬戸際か

「一石四鳥」狙いだが、安倍首相の一点突破作戦が奏功するかどうかは依然、不透明だ。公明党の慎重姿勢は簡単には変わらず、衆参の憲法審査会では、むしろ逆効果と反発する声が噴出している。国民へのアピール効果もはっきりしない。

『安倍晋三の憲法戦争』塩田 潮(著)・プレジデント社刊

安倍改憲の最大の問題は、首相自身、一方で「新時代の憲法を」と唱えながら、押しつけ憲法打破や、左右対立時代の9条論議など、冷戦期の発想に基づく改憲思想から抜け出せていない点である。改憲は他の政治課題をすべて脇において取り組まなければならないほど、大きな政治的エネルギーを要する。改憲を容認するとしても、憲法のここをこう改正すれば、国民にこんなプラスがあるという具体的なメリットや将来像を示さなければ、国民の理解と支持は得られない。有権者を改憲に動員するのは簡単な話ではない。

首相はそれも承知の上で勝負に出た。実は「敵は本能寺」で、森友学園疑惑による逆風などで「1強」体制のほころびが目立ち始めた政権の立て直しを企図して、改憲という変化球を投げた可能性もある。実際は改憲実現どころか、首相としての求心力に陰りが見え、これからの政権維持に対して危機感を抱いているのかもしれない。「在任中の改憲実現」は今や瀬戸際、という自覚があり、だから改憲メッセージで一発逆転、という賭けに出たのだろうか。

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