大事なのは憲法の基本をきちんと維持すること

【塩田潮】公明党は憲法について「加憲」を唱えていますね。

北側一雄氏(衆議院議員・元国土交通相・現公明党副代表兼憲法調査会長)

【北側一雄・公明党副代表兼憲法調査会長】日本国憲法が公布されて11月3日で70年を迎えましたが、私たちの現憲法に対する見方、評価は、議会制民主主義を始め、戦後のわが国社会の基盤をつくってきたという意味で優れた憲法だと高く評価しています。国民にも広く浸透していると理解しています。特に国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の三つは普遍的な原理で、しっかりと堅持していかなければならないと考えています。

その上で、戦後70年を経て、時代も大きく変化し、憲法制定当時に想定していなかった課題も出てきているわけで、そうした課題を憲法の中でどう位置づけていくか、70年経ってこの憲法の規定のままでは不都合という点について、憲法の基本原理は維持しながら、条項を加えていく。そういう意味で「加憲」という言葉を使っています。

【塩田】「加憲」は新しい条項や表現を加えるだけで、現憲法の修正や削除は。

【北側】文言を修正していくことも当然あるだろうと思います。加えるだけといった形式的な話ではありません。大事なことは基本をきちんと維持することです。

【塩田】現憲法の評価という点で、自民党の中には、占領下で連合国側から押しつけられてつくらされた憲法という経緯を強調して、自主憲法制定を強く主張する人がいます。

【北側】そういうお考えをお持ちの方は、自民党の中でも一部で、党全体はそうではないと受け止めています。それに、押しつけ憲法かどうかという議論は、あまり意味がないような気がします。戦後70年、この憲法は国民に広く浸透しているわけでして。

【塩田】「加憲」の中身についてお尋ねします。まず憲法第9条ですが、安倍晋三内閣は集団的自衛権の行使容認と関連法制整備について、現憲法の解釈変更で対応しました。

【北側】現憲法は無防備を定めているわけではなく、当然、自衛権はあり、急迫不正の侵害の排除は政府の基本的な責務です。最高裁判所を含め、そういうふうに理解をしているわけです。その自衛権の限界がどこにあるのかという議論を長年、国会でも積み重ね、憲法第9条の下で許容される自衛権について、ずっと憲法解釈でやってきました。

集団的自衛権の問題では、一昨年に閣議決定し、昨年に法制をつくりましたが、私も関わって憲法第9条の下で許容される自衛措置の限界を明確にしたと私は理解しています。国際法上、集団的自衛権として位置づけられるものの中で、極めて限定的な行使が容認されたということです。それ以上のことをやろうというなら、憲法改正が必要と一昨年7月の閣議決定に書き込んであります。そういう意味で、わが国をめぐる厳しい安全保障環境の中でも、この法制の下で国民の命と平和な暮らしを守ることができると判断したわけです。憲法の問題では、第9条の第1項、2項について解釈を確定させましたから、この点では第9条の改正は必要ないと私は考えています。

ただ、自衛隊に対する認識も変化し、国民の自衛隊に対する理解が相当高まっている中で、自衛隊の存在と役割を憲法の中に書き込むべきではないかという議論は、党内にも当然あります。ただ、安全保障法制をあそこまで整備した今、急いでやるべきかどうかというと、現実の必要性はないと私は思っています。