斎藤哲也さんの連載「補助線としての哲学」。今回から3回連続で番外編「いま読むべき3冊の思想書」をお届けします。斎藤さんはこの3冊について「愚かさを増しつつあるこの世界に抵抗するための“希望の書”」といいます。その理由とは――。第1回は國分功一郎さんの新著『中動態の世界』を取り上げます。

この春に刊行された必読の哲学・思想書とは

今回から3回に渡り、番外編ということで3冊の哲学・思想書の紹介をしたい。というのも、人文書の世界では、この3冊が今春にほぼ同時に発売されたことで、「祭り」といっていいぐらい盛り上がっているからだ。

その3冊とは、國分功一郎著『中動態の世界 意志と責任の考古学』(医学書院)、東浩紀著『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン)、千葉雅也著『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文藝春秋)である。

軽薄な言い方で申し訳ないが、この3人が哲学・思想分野のスター選手であることは、少しでもこの分野に興味を持っている人なら、多くの人が認めるところだろう。そんな3人の著作が、ほぼ同時発売というのだから、思想好きなら鼻血モノだ。書店の人文コーナー担当者も「売ったるで」と腕まくりをしている。

当然、ファンの一人として、僕も3冊をコンプリートした。はっきり言おう。この3冊は、愚かさを増しつつあるこの世界に抵抗するための“希望の書”だ。少なくとも、僕はそう読んだ。

では、それはどのような抵抗なのか。そんな問題意識から、3冊の本を紹介していきたい。