上司からも部下からも結論を急かされる時代。あらゆることで即断即決をすることが常に良い結果をもたらすか。心理学者・植木理恵氏がベストな方法を伝授する。

緊急チェック!「あなたの思考は、深いか浅いか」

↓あなたの習慣、行動にあてはまるものをチェックしてください。
□部長から叱られた。「自分は嫌われている」と感じる
□「プロジェクトのミスは自分のせいだ」と責任を感じる
□「新人ではないのだから、しっかりすべきだ」と自分を責める
□「あの人は本当はこう思っているんじゃないか?」と勘ぐる
□「あっちを買えばよかった」と後悔する

※チェックした数が少ない人ほど、深く考えている人。解説は本文をご覧ください。

カレーとオムライス。作るならどっち?

作るのに一晩かかるカレーと、30分でできるオムライス。手間がかからないのはどちらの料理でしょう。実は、多くの主婦がカレーを選びます。なぜなら、オムライスは所要時間が短くても作業が煩雑ですが、カレーはシャトル鍋で10分煮れば、あとは放ったらかしで完成です。

これが時間の新法則。時短という言葉だけですぐに決めつけず、作業工程にまで考えを深く思い至らすことができるかが、鍵になります。

即断即決は仕事の鉄則です。ビジネスをするなら、どこかで結論を出さないといけません。そこで考えすぎることなく、すぐに正しい決断を下して行動に移せるのであれば、素晴らしいことです。ただしそれは正しい決断ができればの話。心理学的にも結論を急がされるのはよくない状態です。極論になりますが、「死にたい」とふと思った瞬間に自殺したら、まずいですよね。だから私は悩んでいる人に、「その悩みは、本当に今、悩まなきゃいけないことですか? 明日もう一度考えて結論を出してください」と問いかけます。

「明日できることは、明日しなさい」が、心を楽にするルールなんですね。

最近、結論延期能力が注目されるようになりました。知能テストのパズルの問題で、一致するピースが見当たらないとき、こだわっていつまでも探し続けるタイプと、一旦その問題を棚上げして次の問題に移るタイプがいます。ここで後者のように結論を先送りにできる人と、IQが高い人とは相関関係があるとわかっているのです。

そもそも、人間の心は大きな決断をすぐには下せないようにできています。ヨーロッパで臓器提供するかしないかというアンケートをとったところ、宗教的・文化的土壌はほぼ同じはずなのに、「する」の回答が優勢な国、「しない」が優勢な国で真っ二つに分かれました。なぜか。実は「する」派の国は、アンケートの質問が「臓器移植をしたくないと考えるなら、下の空欄にチェックを入れてください」、「しない」派の国では、同様に「臓器移植をしたいと考えるなら……」という文章だったのです。どちらの質問に対しても、回答者は空欄をチェックしませんでした。大きな問題を問いかけられると、人は判断できなくなり判断を保留します。実質的には判断を下しているのですが、少しでも結論を先送りしようとしているというアンケート結果が出たのです。

もっと身近な例でいえば、洋服売り場でぶらさがっているネクタイ。これが6本下がっていると、自然と選びたくなるから購買率が上がります。でもネクタイを30本揃えた店は、まず売れません。選択肢が多すぎて、客が「もう今日はいいや!」と投げてしまうのです。

このように、人は大事な決断を先送りにする思考のクセを持っています。だから早急に結論を出す必要性も承知のうえで、たまには少しゆっくり考えてみたらどうですか、と私はあえて言ってみたいのです。