親が“要介護7”の状態でも、介護離職は絶対するな
「介護離職は絶対にしないでほしい」というのはSさんです。
「親への情と経済力をはかりにかけたら、やはり大事なのは経済力。収入がなければ介護は行き詰ってしまいます。私が担当している家族には奥さんが要介護度2、お母さんが同5のダブルケアの状態で仕事を続けている方がいます。その方は自営業で商売を始めた時の借金がまだあって仕事を辞めることができない。借金を抱えながらの仕事と介護は本当に大変そうなんですが、それでもご本人の努力と我々が知恵を出すことで、乗り切っています」
仕事や自分を守るために要介護者に付きっ切りになれないということに不安を感じるのであれば、それを手軽にフォローできる新しい民間のサービスを利用することを考えるべきだといいます。
「以前、象印が無線通信機を内蔵した電気ポットを開発し、お湯の使用状態から高齢者の異変を察知する見守りサービスを始めたことが話題になりましたが(「みまもりほっとライン」)、最近ではさまざまな業種が事業の特性を生かしたサービスを提供するようになっています。たとえば、セキュリティ会社の見守りサービス。トイレなどの生活導線にセンサーを設置し、一定の時間内に動きがないなど異変があった時は、セキュリティ会社に通知され、家族への連絡や担当者の訪問指示を行なうものです。また、家族が見守り環境を作ることもできます。『見守りカメラ』というのがあるんです。このカメラを家内に設置し、留守中に撮影した映像をスマートフォンなどで確認できます。これにより、要介護者の状況をいつでもチェックすることができます」
もちろん、こうしたサービスや環境整備にはお金がかかります(見守りカメラは1万円前後)。しかし、それによって介護のために仕事を辞めずに済んだり、要介護者に付きっ切りで睡眠不足になるのを防げたりするのであれば、その出費は相殺して余りあるのです。要は、Iさんたちケアマネージャーが言いたいことは、介護殺人という悲劇的結末を迎えるくらいなら、あらゆる手段を動員してそれを防ぐべきだということ。
ケアマネージャーなどの専門家の知恵、民間の見守りサービスや見守りカメラなどのテクノロジーなどを利用することで、そんな悲しい事態は防げるというのです。
3人のケアマネージャーからは、それ以外にも、介護殺人という悲劇を招かないための発言を聞きました。次回に紹介したいと思います。