自民党の女性政治家は、チルドレンやガールズが多すぎる
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、民進党結党時に「自民党の女性議員はぶりっ子ばかり」と語った(ダイヤモンド・オンライン「アグレッシブ女性議員の力で民進党は一大野党になれるか」http://diamond.jp/articles/-/89583)。
現在表舞台に立つ自民党の女性議員には、2世議員はもちろん、小泉チルドレン出身や、女性票を狙って擁立されたいわゆる「刺客」候補出身など、そもそも政治家となる経緯自体が父親の地盤継承や、男性権力者の目に留まり引き上げられてそこにいる女性人材が多い。しっかりとした実績やキャリアがあってここまで来たという印象ではないのだ。
「自民党の女性議員というと、稲田朋美さんや高市早苗さんなどの安倍ガールズが象徴的ですが、自民党という厳然とした男社会の中で、媚びないとやっていけないようなタイプが多いんじゃないでしょうか。昨年9月の自民党総裁選への出馬を画策したことで、安倍首相とは距離のある野田聖子さんですら、今年2月に開かれた1993年衆院初当選議員の同期会で安倍さんと対面し、『怒っている?』『私のこと嫌い?』などと尋ねていました」(鈴木哲夫氏、同記事より)
野田聖子氏のエピソードは持ち前の茶目っ気を炸裂させたものだろうと察するけれど、自民党内で女性議員としてのし上がるにはもともと「年長の男ウケ」が最大の必要条件となっている感さえある(野田氏は年長の男性議員に引けを取らない政治家30年のキャリアなので、今さら男ウケを狙わない)。誰か権力者にかわいがられて引き上げられる、というのは多かれ少なかれ男性政治家も女性政治家も同じ構図ではあるのだが、女性議員の場合は時代背景から育成を急いだこともあって、男性議員と違って「実績が問われることなく偉くなれてしまう」パターンが多いことに問題がある。つまり、「偉くなる」根拠が実績ではなく、シンプルに「年長の男ウケ」じゃん、と有権者の目には映るのだ。
網タイツ姿のゆるいセクシーメガネっ娘路線
「誰?」……2012年、稲田氏が第2次安倍内閣で規制改革担当大臣として初閣僚入りしたとき、そう思った人は少なくなかっただろう。それまで大きな政治的軋轢やミスを起こさず、悪目立ちせず、着実に保守軸で足場を固めてきた、弁護士出身で教育県・福井県選出の女性議員、当時3選。女性活躍という言葉を口にするようになった安倍内閣は、改造のたびに女性閣僚の数を取り沙汰される時流にもあったため、小渕優子氏や森まさこ氏、高市早苗氏など他にもっと派手でメディア映えする女性閣僚も勢揃いする中で、無難にワンオブゼムとして認識されていたように思う。福井の産業を応援ということで、網タイツに伊達メガネのゆるいセクシーメガネっ娘コスプレ(私の目にはそう見える)を始めた時も、「なるほどそういう差別化とキャラ立てでいらっしゃいましたか、へー」という印象だった。
安倍晋三氏の秘蔵っ子としてその後の政調会長時代を経た稲田氏が、しかしながら2016年第3次安倍第2次改造内閣で「防衛大臣」として返り咲いたとき、「安倍さん、やるなぁ」と唸った。あのゆるいメガネっ娘キャラで保守で手堅い弁護士出身で「防衛」とは、特定の保守男性層にとってはドンピシャ、間違いなく大歓迎される選択と思えたからだ。実際、ネットの一角では「朋美たん」扱いで、御年58歳にしてなお可愛いカワイイと愛でられている。おじいちゃんばかりの自民党なら、58歳女性議員なんて若いコ扱いだろう。ニーズとは、掘れば案外無限に存在するものだ。うーん、勉強になる。