初の海外勤務は「屋根裏暮らし」
1994年12月30日、ベルギーのブリュッセル国際空港に着く。寒風が吹き、気温は、東京よりも5度ほど低い。年末年始の休暇旅行でも、急な出張でもない。2カ月前にブリュッセル郊外に設立された住友化学ベルギーに、副社長として着任するためだ。44歳。それまでに海外出張は何度もあったが、初の海外勤務だった。
赴任前の1年余り、大阪にある染料事業部門で、欧州事業の立て直し案づくりに参加した。かつて世界で優位にいた日本の染料事業は、85年の「プラザ合意」以降の大幅な円高で、価格競争力を失った。韓国や中国の安い製品の輸出拡大が続き、大型再編を済ませた欧米勢の攻勢も受け、減産を余儀なくされていた。
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