伝わる言葉を選んでビジネスを動かす
言葉の魅力という意味では、『魔法のコンパス』にも注目したい。お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんの本だが、この人はビジネスの原理原則をすべて理解したうえで、一般読者に「届く言葉」でそれを語っている。
たとえば、「僕らの身の回りには『取りこぼし』がまだまだ間違いなく残っていて、世の中はもっと面白くなる」。
「ニッチ」といったビジネス用語を一切使わず、読み手の認識の中にある言葉だけを使って、高度な概念を説明している。しかも言葉が前向きだから、伝わりやすい。この伝え方をできるビジネスマンが増えれば、日本はすごいことになる。
8年足らずで売り上げ70億円の企業にまで成長したイギリスのクラフトビール会社、ブリュードッグの創業者による『ビジネス・フォー・パンクス』も、言葉の力にうならせられる本だ。
「会社は失敗する。会社は死ぬ。会社は忘れられる。だが、革命が死ぬことはない。だったら会社ではなく、革命を始めればいい」と、冒頭からものすごい。起業には明確な目的と使命、存在理由が求められる時代なのだという認識を、ベンチャー魂に満ちた言葉で語る。それでいて、「パンク起業家のための財務用語集」「キャッシュこそ絶対王者だ」など、非常にまっとうな部分があるのも面白い。ビジネスへの情熱を忘れかけたとき、ぜひお勧めしたい一冊だ。
【初心者にぴったり!“雑談力本”ベストセラーの系譜】
誰とでもつながれるSNS社会では、いろいろな人と友達になれるスキルが大事。話し方、特に雑談力が注目されるのはそのため。売れ筋本にはベーシックな内容の良書が並ぶ。
◆『雑談力が上がる話し方』齋藤 孝(著)/ダイヤモンド社
◆『聞く力』阿川佐和子(著)/文藝春秋
◆『会話がとぎれない! 話し方66のルール』野口 敏(著)/すばる舎
◆『伝え方が9割』佐々木圭一(著)/ダイヤモンド社
◆『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』吉田尚記(著)/太田出版
◆『超一流の雑談力』安田 正(著)/文響社