政府案通れば、もっとサービス残業をさせられる?
また、今回の政府案は上限規制を目玉にしているが、仕事の現場では、それだけでは旧態依然とした働き方の問題点が解決できないことが多い。
例えば、サービス残業だ。企業によっては、上限規制を理由にサービス残業を強いる可能性も否定できない。建設関連企業の人事担当者はこう指摘する。
「上限規制で残業時間を(実質的な青天井から)月60時間に下げれば、大量の仕事を抱えている社員は、会社に迷惑をかけまいと陰に隠れて早出して働くとか、自宅に持ち帰ってやるなどサービス残業をしてしまう可能性もある」
もちろん、社員自身が毅然として実際の労働時間を申請すればサービス残業は発生しないが、発生してしまっているのが実情だ。
厚労省の委託調査の企業アンケートでは、社員の労働時間の把握方法は以下のようになっている。
「タイムカード、ICカードなど客観的記録で確認している」47.4%
「(上司などが)直接始業時刻や終業時刻を確認している」25.4%
「労働者が自己申告している」21.5%
要するに、上司が意図的に残業時間を操作できる、または社員本人が少なく申請する余地が残されているということだ。ちなみに、同調査では「持ち帰り仕事がある」と答えた人は34.5%。その頻度は週2~3回、週3~4回、ほぼ毎日という人の合計は29.5%に上っている。
政府が上限規制をしても、企業内部の取り組みが進まない限り、実残業時間は変わらず、長時間労働の是正につながらない可能性もある。