人事部は「準備した回答」を木っ端微塵

新卒の採用面接ではさまざまな角度から質問を浴びせられる。当然、学生も質問を想定した回答を用意して臨むだろう。しかし、企業や質問者によっては同じ質問でも知りたいことが別にあるというケースも少なくない。

たとえば「あなたの成功、失敗体験とはなんですか」という質問。

昔からある質問だが、これは何も成功や失敗の事実を聞きたいわけではない。誰の意思でどういう目的を持ってチャレンジしたのか、そこから身につけたものは何かを知りたがっている。

とくに失敗や挫折に関しては、その中身をしつこく聞かれることが多い。これは失敗経験のコンプレックスをいかに克服したのかを知りたいのであり、それによって社会人になっても挫折することなくやっていけるようなエネルギーを持った人物かを見定めようしている。

学生の中にはたまに「私、失敗したことがありません」と言う人もいるらしいが、そういう人はまず論外だ。学生側も高校、大学時代、アルバイトの経験の中から失敗事例をいくつか探して準備する人も多いだろう。

採用担当者の中には、この質問で物事を順序立てて論理的に考えることができる「論理的思考力」の有無を見極めようとする者もいる。

石油会社の人事課長はこう話す。

「成功・失敗体験であれ、本人がとった行動の背景にどういう思考があり、それがどの程度深かかったのかを見ている。深く考えて行動するタイプは会社に入っても伸びる」

もちろんそのことを踏まえて、自分なりのストーリーを事前に考えて答える学生もいる。見事な論理展開に面接担当者を唸らせることもある。

ところが、石油会社の人事課長はこう見ている。

「スラスラと受け答えができるのは準備してきたということ。その場合は意図的にプレッシャーをかけて緊張した雰囲気を作り出し、自分が言いたいことをどれだけ言えるのかを見る。あるいは視点を変えて何度も同じ質問をすると、真剣に考えて行動しているのか、いないのか、化けの皮が必ず剥がれる」