とはいえ、正面から正論をぶつけるだけでは逆効果。最初に相手の話を受け入れ共感を示すことに9割の時間を費やし、その後でアドバイスをするのです。逃げてはいけません。サンドバッグになるつもりで、母親の話を聞いてあげることが大事なのです。
また、父親には子供の詰める力を鍛えるために、キャンプに連れ出して野外体験をさせたり、原爆資料館など人類の「負の遺産」を教える場所へ連れていったりすることをお勧めします。小学校高学年になると、子供は大人社会のきれいごとではない「本音」が気になり始めます。そのタイミングで現実社会の怖い一面を感じさせるとともに、自分が暮らしている社会や家庭のありがたさに気づかせるのです。
見える力を伸ばすには囲碁を習わせたり、パズルを解かせたりするのが効果的ですが、こちらも父親のほうが得意かもしれません。何よりも父親が子供との時間を多くとることで、母親の負担感が薄れ、家庭の雰囲気は必ず上向きます。学力を含めた子供の力を伸ばすには、それが一番効果的なことだと私は考えています。
(久保田正志=構成 大杉和広=撮影)