「給与格差」が認められるケースとは?
ところで、同一労働同一賃金で最も問題になるのは「基本給」の違いだろう。
だが、賃金制度は企業によって異なる。培った能力・経験に基づいて基本給を支給している企業もあれば、成果・役割に基づいて支給している企業もある。
指針では「労働者の職業経験・能力に応じて支給しようとする場合」ついてはこう述べている。
「正社員と同一の職業経験・能力を蓄積している非正社員には、職業経験・能力に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、蓄積している職業経験・能力に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない」
やや抽象的であるが、たとえば同じ年に正社員に採用された人と非正社員で採用された人がいるとする。ともに同じ仕事を担当している場合、基本給は同じにしなさいということを意味する。
また、正社員が昇格し、給与が上がる場合、非正社員の能力が正社員と同じであれば、非正社員も同じように給与を上げなさいということだ。そうなると、仕事の内容や能力など前提条件が同じであれば非正社員の処遇が大幅に改善されることになる。
しかし、この指針では例外も設けている。
具体的には(1)総合職という名のキャリアコースの違い、(2)転勤・職務内容の変更の可能性――の2つである。
基本給の違いが問題とならない例についてこう述べている。
「総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容と配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながらYと同様の定型的な仕事に従事している。(XとYが勤める)B社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における職業経験・能力に応じることなく、Yに比べ高額の基本給を支給している」
また、同じ職場で同じ業務を担当している非正社員の2人のうち、1人を正社員に登用し、職務内容や勤務地の変更があることを理由に非正社員に比べて高い賃金にすることは問題にならないとしている。