対立相手と合意する2つのポイント
一方、面談や会議などの場で相手の理解や協力を得るには、相手の考えも理解する姿勢が大切です。建前で理解を示すのではありません。相手の考えの背景にある立場や価値観まで理解し、相手を認めるということです。相手としっかりとした対話や議論をするには、信頼関係の醸成も必要。特に利害の対立する相手と合意に至るには、何度か面会したり、ときには食事をして関係を深めることで、率直にものが言い合えるようになります。
1990年代の経営合理化の際に、派遣人事センターの部長代理として、出向予定の社員に新しい職場を確保したときは、一人ひとりの気持ちに配慮しながら丁寧に面談を行い、その人の能力が活かせる職場を斡旋できるよう努めました。また、住友金属工業との合併では、最初から組織の統廃合について議論をするのではなく、まず統合して親睦を深め、一緒に仕事をして、相手の会社のことや、互いの違う部分を理解し、そのうえで組織に関する議論を行ったため、スムーズな合意形成ができたと思っています。
私はラグビーを通じて、一人では何もできない、勝つためにはメンバー全員のチームワークが必要だと学びました。会社も同じで、2万5000人の中に不満をもつ人がいてはいけないという思いが常にあります。ですから、現場の従業員にも役員にも分け隔てなく、まさに「オナー・イズ・イコール」の姿勢で接しています。
新日鉄住金社長 進藤孝生
1949年、秋田県生まれ。73年一橋大学卒業後、新日本製鉄(現・新日鉄住金)へ入社。広畑製鉄所総務部長、経営企画部長などを経て、2014年より現職。高校・大学とラグビー部で活躍し、秋田高校時代には花園ベスト4。
1949年、秋田県生まれ。73年一橋大学卒業後、新日本製鉄(現・新日鉄住金)へ入社。広畑製鉄所総務部長、経営企画部長などを経て、2014年より現職。高校・大学とラグビー部で活躍し、秋田高校時代には花園ベスト4。
(増田忠英=構成 市来朋久=撮影)