これらの言葉は、いろいろな場面で繰り返し話します。従業員が「社長がまた同じことを言っている」と思ってくれたらしめたものです。そう思うのは、その言葉が従業員の記憶に残っている証拠だからです。

2つ目のパースエイシブは「説得的」という意味です。相手を説得するには、論理が明確でなければなりません。話す内容を考えるときは常に、どの順番で話せば伝わりやすいかを考えます。

3つ目のプロボカティブは「挑発的」。経営やマネジメントの言葉は、聞く人を駆り立て、「よし、やろう」という気持ちにさせる必要があります。

一つの例を紹介します。母校の一橋大学ラグビー部のOB会で寄付を集め、グラウンドを人工芝にしようという話が持ち上がりました。しかし、試算してみると8000万円もの費用がかかる。「集めた金額が足りなくて実現できないと、寄付をしてくれたOBに申し訳ない」という理由から、一度は盛り上がった計画が中止されそうになりました。そこで私は、OB会の臨時総会のスピーチで、「もし寄付が半分しか集まらなかったら、グラウンドを半分だけ人工芝にしよう。残りは、きっと何年後かに後輩たちが完成させてくれるはずだ」と話したのです。すると、会場は一瞬で「やろうじゃないか」というムードに変わり、結果的に費用を上回る寄付が集まり、無事グラウンド全面に人工芝を敷き詰めることができました。「どんな話をすればみんながやる気になるのか」を考えることは、スピーチの重要なポイントです。

スピーチをする際に注意したいのは、決められた時間内に収めることです。持ち時間で伝えたいことが伝わるようにスピーチ文を用意し、事前に何回か練習して本番に臨むようにしています。

入社式や年頭挨拶ではストップウオッチを使い、5回程度念入りに練習するという。

先日、中国の鉄鋼連盟でスピーチをする機会がありました。鉄鋼業界は今、中国の過剰生産によって安い鋼材が海外市場に出回り、多くの企業が業績を悪化させています。そこで、過剰生産を減らすために、日本の経験を話して参考にしてもらおうと思い、入念な準備をして臨みました。ところが、当日になって持ち時間が思いのほか短いことがわかり、話を時間内に収めるのに苦労しました。どれだけ素晴らしい話を準備しても、時間が気になってしまうと、伝えたいことも伝わりません。