今年に入って、国内外のメディアが“現政権に強い影響力を持つ極右団体”として、国民運動団体「日本会議」を立て続けに特集した。安倍晋三首相を筆頭に多数の国会議員や団体がここに所属している。

菅野 完(すがの・たもつ)
著述家。1974年、奈良県生まれ。一般企業に勤務するかたわらで執筆活動を開始し、退職後の2015年より本格化。ウェブメディア連載「草の根保守の蠢動」を書籍化したのが本書。

この団体を追った書籍で最も注目されたのが本書だ。

「多様な人たちが日本会議で一緒に運動を続けられるのは、政策目標や綱領によるものではなく、単に“左翼が嫌い”の一点だけです。日本のオジサンやオバサンは権利や自由を主張する左翼が嫌いじゃないですか。新しいことも、よそ者も嫌い。それって、まさに“日本”でしょう? よく考えられたネーミングです」

著者の前職はBPOサービス企業の企画営業。受託業務の品質管理で磨かれた鋭い目配りが取材にも活きている。

初版8000部が発売後わずか3週間で5刷、計12万6000部。発売当日に、当の日本会議から版元に出版停止の申し入れがあった。また参院選前には、宗教団体「生長の家」が「与党とその候補者を支持しない」との声明で、本書を梃子に日本会議が現政権に時代錯誤的な影響を与えている、と批判した。

「日本会議は戦前・戦後の労働運動と創価学会の宗教運動の両方から人々を組織化する運動を学び、それを地方で地道に展開してきたのです」

これは、安倍政権の支持基盤に対する新たな論点だ。

シンジケートは各方面に要人を散らしてコネクションを広げ、互いを担保し保証しつつ、その影響力を拡張する。本書はまさしくその一端を担う組織の深奥を抉り出した。

ただ、複数の組織や人脈が入り組む日本会議だけ凝視しても、見える事柄は限られる。反目関係も含め、全体の相関や構図はいまだ不明だ。

(永井 浩=撮影)
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