アベノミクス以降、日本企業は増収増益となっており、これが株価上昇の大きな要因となってきた。だが増益要因のほとんどは、円安による売上高と利益の増加である。この間に日本企業のビジネスモデルが根本的に変わったわけではなく、円安が一服してしまうと、企業の業績もそこで頭打ちとなってしまう。

今年に入って逆に円高が進んだことで、輸出産業を中心に来期の業績見通しを引き下げるところが相次いでいる。これは株価にとって確実にマイナス要素となるだろう。日本を代表する自動車メーカーであるトヨタも、16年3月期については何とか増収増益を維持したものの、17年3月期については減収減益を見込んでいる。売上高は6.7%減だが、営業利益はなんと40%もの減少だ。

輸出産業が振るわなくても、個人消費が伸びれば内需企業を中心に業績が拡大するというシナリオも描けなくはない。だが、日本経済の現状を考えるとそれも期待薄である。

先ほど、輸出産業の業績拡大は円安によるものと説明したが、円安は内需型企業にとってはマイナスとなる。特に輸入物価が大きく上昇したことで、各社は値上げに踏み切らざるをえなくなっており、これが家計を圧迫している。

日本の実質賃金は、名目賃金が物価上昇に追い付いていないため5年連続のマイナスであり、家計は財布の紐を緩めることができない。消費増税の再延期は、こうした事態を多少緩和させるだけの効果しかなく、本格的な消費拡大にはつながらないだろう。