究極の「10メートル走」がおもしろい!?

【若新】「ゆるい」という概念が浸透すると、世の中が「ゆるい空気」に支配されることに危機感を覚える人もいるみたいなんですが、「ゆるい」という概念は、本流に取って代わるようなものではなく、選択肢が広がるだけで、あくまで亜流の発明です。僕が企画した「鯖江市役所JK課」にしても、JK課が注目されたからといって、従来の議会や行政の役割を根本から取って代わるようなものではありません。堅かったものを柔らかいものに変えてしまうのではなく、柔らかい「サブ」や「おまけ」のようなものもいろいろ共存できる状態。「それもあっていい」というのが「ゆるさ」の本質ですね。

スポーツと言えば、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けては、何か考えていますか。

澤田智洋(さわだ・ともひろ)●一般社団法人世界ゆるスポーツ協会代表理事。1981年、東京都生まれ。子ども時代をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごす。2004年慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手広告代理店に入社。以来、コピーライターとして活動している。14年頃から、仲間たちとゆるスポーツ普及の取り組みを開始し、16年に一般社団法人世界ゆるスポーツ協会を設立して現職。著書として『ダメ社員でもいいじゃない。』がある。
世界ゆるスポーツ協会
http://yurusports.com/

【澤田】それほど意識はしていませんが、オリンピックとパラリンピックの間は2週間ほど空いているので、その期間を埋めるような企画はゆるやかに考えています。

【若新】以前この連載でも書きましたが(http://president.jp/articles/-/19883)、東京が2回目のオリンピックを開催する意味とは何かと考えてみると、もはや先進国への登竜門の位置づけではないので、お金をかけて規模を大きくすることには多くの人が辟易してると思うんです。なんか、趣向の違うことはできないでしょうかね。

【澤田】そうですね。既存のオリンピック競技でもない、パラリンピック競技でもない、第三のスポーツを提案したいです。そこにはスポーツ本来の楽しさや、日本のクレイジーさが凝縮されていて、誰も排除しない、妙にオープンさがあるものを提案できればと考えています。そういうものを、ある種“終わってるカントリー”――「オワカン」と僕は呼んでいますが――の日本から発信できるとおもしろいですよね。

【若新】それなら、「ゆるリンピック」みたいなのをぜひやってほしいですね。最先端の技術を使った、究極の「10メートル走」とかどうでしょう。いま、センサー式のスターターでフライングを厳密に測ったり、ゴールの瞬間も厳密に判断できるので、究極の10メートル走ができそうです。そもそも、100メートルを速く走ることに何か本質的な意味があるわけではないので、10メートル走でもいいはずです。メダリストもガラッと変わると思います。

【澤田】それ、ぜひ見たいですね。