新しいロビーは公正性・透明性が重要になる
その答えこそが、新しい形のロビー活動だ。ロビイスト、ロビー活動と聞いて読者の多くが考えるのは、これまで述べたような、伝統的永田町政治だろう。
しかし、世界の潮流となり、日本ではじまりつつある「パブリックアフェアーズ」と呼ばれる新しいロビー活動と旧来のロビー活動はまったく違うものだ。
新しいロビー活動(パブリックアフェアーズ)が、これまでのロビーと違うのは、以下のような点だ。
◆簡単に言えば、これまでのロビー活動に、公正性、透明性を加えたものが新しいロビー活動(パブリックアフェアーズ)だ。そのためPRの手法が援用されることがある。
◆これまでのロビー活動は閉鎖的で、意思決定の過程にひと握りの人間しか関与できなかったのに対し、新しいロビー活動(パブリックアフェアーズ)はオープンな場で議論することを前提とする。
◆これまでのロビー活動はマスコミを避けるように実施していたが、むしろメディアに公益性を主張していくことで世論を喚起していく。
◆これまでのロビー活動が一企業の利益や便宜獲得を目的とすることが多かったのに対し、新しいロビー活動(パブリックアフェアーズ)は国益、社会への貢献を目的としており、広い合意形成を目的としている。
◆これまでのロビー活動は主に政府・政治家に対して行われてきたが、新しいロビー活動(パブリックアフェアーズ)は、NGO、NPO、消費者団体、学術団体に対しても実施する。
以上のように、新しいロビー活動は、フェアでオープンなやり方だ。この方法で企業の考えを発信するとき、「自分の会社のことばかり考えていてけしからん」というような批判は起こりえない。そもそも公益にかなう意見でなければ、世の中で広く受け入れられるということもない。旧来のロビー活動は今後、おそらく通用しない時代になる。だから、企業は新しいロビーの手法を学び、時には専門家であるロビイストとともにロビー活動に取り組むべきだ。
また、日本政府は、企業の声を求めている。日本の発展のために、国内のルール、政策がいかにあるべきかを決定するには、消費団体の声を聞く必要があるのと同様に、市場参加者(民間企業)の声が不可欠だ。話は国内だけでは終わらない。政府は日本企業が海外で活躍するため、さまざまな方策を打ち出しているが、これもやはり企業からのレスポンスがなければ成り立たない。
しかし、企業の側は旧来の因習にとらわれて動きが鈍く、このままでは海外企業に国内市場までも食い荒らされてしまう。
※本連載は『ロビイングのバイブル』(藤井俊彦/岩本隆著)の内容に加筆修正を加えたものです。