天災への保険がほしい

――では、販路の選定基準については、どうでしょう。こういう販路とは付き合えないというような基準はありますか。

【鈴木】「おいしさを求めて」という理念が共有できないところは途中で外させてもらいます。そのシーズンはつきあっても、次はゴメンナサイです。

――農業界は他の産業に比べると補助金が手厚いですね。生産法人として、補助金はこうであってほしいという考えをお聞かせください。

【鈴木】何より、天候災害リスクに対する補助金というか、保険のような仕組みがほしい。僕たちも、もともと取り組む予定だった事業に合致するような補助金が存在していれば使わせていただいています。例えば今回、加工業務用野菜の生産者に対する補助金が出たのですが、僕たちのような加工野菜を栽培している農家には大変有用だと思っています。あとは先ほど申し上げたような、大きなリスクを軽減してくれるような仕組みがあるとありがたいですね。

――コメには共済のような形がありますが、生鮮野菜ではないですね。

【鈴木】積立式の保険でも何でもいい。昨年の台風で僕らの農地は川が氾濫して水没しました。毎年浸水するので騒ぎにならないのですが、非常に苦しい。水田の裏作でレタスを作っていますが、水田は川が溢れたときの水の逃げ道です。国は水田のフル活用を奨励していますが、それを裏作でやれば必ず水没します。水に浸かったときにリセットできるだけの金額でリスクを担保したい。

――補助金というよりは災害に対しての保険ですね。

【鈴木】それがあれば災害からも早く再生産に取りかかれます。

――現実には、災害リスクにどう対応していますか。

【鈴木】会社経営で補うとすると、台風リスクが高まった場合、一緒に責任を負ってくれる会社さんを探して、それを引き受けてくれた分は植えます。浸水したら小さな葉のレタスになりますが、それを買ってくれますか。OKです、となれば植える。そして災害でも全力を尽くして作ります。そういう形でリスク回避は行いました。補助金については、施設整備のためにはもらったことはありません。施設は全部、実費でやってます。施設の補助金は採択されるまでに1年、2年かかる。待てません。出荷に困るのですぐ建てたい。先にやっちゃいます。

――逆に事後申請も認めてくれるようであれば。

【鈴木】絶対に申請しますよ。もともと自己責任で建てているのだから、後で認めてくれればOKです。全然、問題ありません。

――スピード感が求められるプロの農家は、補助金を待っている時間がなくてどんどん進める。そういう人に還元するには事後申請の承認が必要なのですね。

【鈴木】補助金が半分出るからと施設を建てている農家は、たぶんうまくいってない。自己資金で建てているところは黒字じゃなきゃダメです。銀行からお金を借りていますから。

――補助金をもらうと、それをベースに全部使うためのスペックになりがちです。

【鈴木】余分に背伸びをします。自己資金の半分を事後的に出してくれる形になれば、すごくいい農業ができると思います。