ファストフード最大手の日本マクドナルドホールディングスが、1971年の日本上陸以来、最大の危機を迎えている。使用期限切れの鶏肉問題に加え、年初に表面化した相次ぐ異物混入が「客離れ」に追い討ちをかけた。その結果、2015年12月期は380億円の最終赤字と、01年の株式上場以来、最大の赤字額となる見通しだ。

打開策として、年内に不採算の131の店舗を閉鎖する一方、希望退職募集で100人の従業員を削減し、年間160億円のコスト改善を目指す。しかし、一般に広く浸透したそのワールドワイドなブランド力の高さゆえに、「マクドナルド」信頼失墜の痛手は半端ではない。負のスパイラルに陥って広がる客離れを食い止め、さらに消費者を呼び戻すのは容易ではないだろう。

ファストフードに最も求められる「食の安全・安心」で信頼を失った同社の業績は、まさに急降下だ。1~3月の既存店客数は前年同期から2~3割減、15年12月期の予想売上高は2000億円と前期を10%下回る。2期連続の最終赤字と合わせるとまさにつるべ落としで、かつての「デフレ勝ち組」の面影はまったくない。

客離れを食い止めるため手を打つのは店舗の改装で、今後4年間で全国にある約3000店のうち約2000店で着手し、再建の柱に据える。一方、消費者ニーズに応えた商品、サービスを提供できていないとの指摘に対し、サラ・カサノバ社長兼最高経営責任者(CEO)も「顧客の期待に応えられなかった」と認め、5月に地区本部制を導入し、全国3地域で独自に店舗運営、マーケティングを展開する。

しかし、新メニューの開発はこれからと特効薬はまだ見当たらず、黒字転換を目指すのは16年12月期と長期戦を余儀なくされている。

一方、「健康志向」「安全」を売りにマクドナルドの顧客を奪ってきたモスフードサービスは、ハンバーガー店「モスバーガー」で5月19日から全商品の約9割の値上げに踏み切る。その強気の姿勢が対照的で、ライバル勢の攻勢は日本マクドナルドの信頼回復努力を待ってくれない。

(撮影=宇佐見利明)
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