部下が成長意欲をなくす上司
(2)「おれの背中を見ろ」上司
営業バリバリで抜群の成績を上げて管理職に登用されたが、部下の指導や育成が下手くそな上司のことだ。
例えば、金融業の人事課長はこんな事例を語る。
「部下に仕事を与えても、成果が上がらないことに業を煮やし、がまんできずに自分でやってしまう人。自分ができるのだから部下もできるはずだと勘違いしている。今は自分の背中を見て学べというほど時間に余裕がある時代ではありません。どんなに優秀でも部下を育成できない上司は管理職として失格だ」
プレイングマネージャーの上司は多いが、上司がひとりで何でもやってしまっては、部下が一人前に育つどころか成長意欲を削がれてやる気を失ってしまう。飲料メーカーの人事部長はこんな上司はいずれ淘汰されるだろうと指摘する。
「大事なのはチーム力であり、それを引き出すのが上司の仕事だ。部下の仕事ぶりに不安を感じ、押しのけて自分でやってしまうのでは部下も育たないし、ついていこうという気にもなれない。
課長は若い部下をあずかり、戦力化するという中・長期的な経営課題を担っている。それができなければ管理職を降りてもらい、一匹狼として専門職としてやってもらうようにしている」
(3)独裁型上司
その名の通り、昇進したとたんに豹変し、わがままに振る舞うタイプだ。前述の(1)の部下依存上司に近く、部下よりも役員との付き合いを大事にし、土日はゴルフばかりして管理職になった人に多い。とくに実力があるわけではなく、上だけに気を遣い、部下に配慮することがない。
電機メーカーの人事部長はこうした独裁型上司は部下の思いを理解しようという気持ちがさらさらないと切って捨てる。
「自分のキャラと部下のキャラが違うことを認識できないために、命令口調になり、一方的に指示・命令し、部下の話を聞かなくなる。成果が出せない部下に対して、どうしてできないのかと腹を立て、褒めるよりも責め立てることが多くなる。結果的に組織としての成果が出なくなる負のスパイラルに陥ってしまう。こういうタイプはそれ以上昇進することはないが、本人もそれを自覚しているだけに最も質が悪い」
部下を殺す典型的な上司だが、無能で独善的な上司は今のビジネス環境では絶滅危惧種に近い。だが、「なんであの人が課長なの」と思うような人が意外に多いのも事実だ。