部下が相談する気を完全に失う上司

(1)部下依存(上意下達型)上司

上の指示に唯々諾々と従い、自分で検証したり、独自のアイデアを出すことなく部下に丸投げたりするタイプだ。これは旧来型の典型的上司であり、昔はそんな上司も多かったが、どっこい今も棲息している。

IT企業の人事部長はこう指摘する。

「ITを扱う会社なのにプレゼン用のパワーポイントの資料を作れない上司もいる。上から言われた企画書の資料の作成は全部、部下任せ。当然、余計な仕事を振られた部下の負担になる。それだけならまだしも上から命じられた困難な仕事でもホイホイと引き受けてしまい、結果的に部下を疲弊させてしまう」

じつはこうした上司が多く棲息している典型的な企業が、燃費不正問題を起こした三菱自動車だ。

8月1日に発表された同社の特別調査委員会の調査報告書には、不正の部隊となった「性能実験部」では上の命令で燃費の測定方法を改ざんし、部下に有無を言わせずにウソのデータを出させていた事実を詳しく書いている。

報告書は「風通しの悪い上に逆らえない風土」だったと指摘しているが、それは性能実験部だけではなかった。

調査委員会が実施した「社員アンケート調査」ではこんな声も取り上げられている。

<エキスパートや担当部長が、開発目標の達成が困難である旨の相談に対して聞く耳を持たずに「とにかく目標を達成しろ。やり方はお前が考えろ」「なんとかしろ」としか言わない。相談しようとしても回答を得られないため、相談しようという気になれない>

<部署の上の人は、部門の上の人に対してイエスマンの状態。下の者は無理だと思っていても、上がさらに上に「やれます」と言っているため、上に言っても無理なことがわかっているから言いにいけるところがない>

こんな上司が多ければ、屋台骨まで揺るがす結果になるという典型的事例だろう。