5. 明日できることは今日やらない
大量の仕事をこなすには、なるべく前倒しで手をつけることが重要だと考えている人は多いだろう。しかし、その発想がかえって時間管理を難しくしている場合もある。
「明日できることも今日やったほうがいい」という意識が強いと、いまやるべき緊急の仕事と、明日やっても間に合う仕事の区別が曖昧になってくる。その結果、本来なら「先送りしてもいい仕事」まで「いまやるべき仕事」に見えてきて、「目の前にこんなたくさんの仕事がある。どうしよう」とパニックになってしまう。
大切なのは、「明日できることは今日やらない」という意識を持つことだ。その意識を持つことで仕事の緊急度を冷静に判断できるようになる。緊急度がわかれば、それらを効率的に片づけるための段取りも見えてくる。何でも前倒しでやろうとして慌てるより、そのほうが結果的に仕事は早く処理できる。
そもそも仕事には、それをやるのに適切なタイミングがある。私は原稿がどんなに重なっても、基本的に締め切り当日に書く。週刊誌や新聞の原稿を前もって書くと、テーマが古くなるおそれがあるからだ。
毎朝4時50分に起き、5時に更新される新聞ネット版を真っ先にチェックするのも、最新のテーマで書きたいからである。目を通すのは、朝日、日経、産経、琉球新報、沖縄タイムス。それらを読んだ後、その日書く原稿のテーマを最終決定する。その結果、前日まで考えていたテーマと違うことを書くケースも多い。先日もガザ地区の集団結婚式のニュースを朝一で見て、ある週刊誌の原稿のテーマを急遽、「トルコの危険性について」に変えた。土壇場でテーマを変えるのは大変だが、古くなった原稿を出すよりずっといい。
綱渡りで仕事するのはリスクが高いという声もあるだろう。だが、たとえ綱渡りでも、落ちなければ問題はない。綱から落ちたときのためにスケジュールにバッファを多めに入れる人もいるが、入れすぎると緊張感が失われるリスクがある。むしろ予定を詰め込んでギリギリの状況に追い込んだほうが、いい仕事ができるはずだ。