弘兼憲史の着眼点

▼ユニクロ柳井さんから学んだ商売の原理原則

私の漫画『島耕作』シリーズで島耕作を社長から会長に昇進させた際、こんなセリフを喋らせたものでした。

「社業30パーセント、財界活動70パーセントのスタンスでいこうと思っている」

日本のトップ企業において、社長は社業、会長は一歩距離を置き経済界に尽力するというのが私の考えでした。だが今回お会いした玉塚さんは違っていた。

弘兼「生産性を高めるためには何をしていますか?」玉塚「たとえば、個店ごとに最適な品揃えにするために、PONTAカードのビッグデータを活用しています。仕組みを変えない限り、アウトプットは変わらないと思うんです」

玉塚さんは6月1日付でローソンの会長CEOに就任しました。彼は会長としても「現場主義」を貫くとおっしゃっていました。その根本には柳井さんから学んだことがあるように思えた。柳井さんとの関係をこう教えてくれました。

「僕が恵まれていたのは、7年間柳井さんの薫陶を受けて、商売の原理原則というものを学ばせてもらったことです。つまりすべてをお客さま起点、現場起点で考えること。ゼロベースで現状を俯瞰して、必要があればすべてやり替えることを恐れないこと。経営にはスピードが大切なこと。仮説、実行、検証のサイクルを早く回すこと……いろいろとありましたね」

まさに玉塚さんがローソンでやっていることです。

▼「行動する会長」という新たな像をつくり上げる

対談の最後に、「5年後、10年後の自分の姿を想像したことがありますか」と尋ねてみました。すると彼は困った顔になりました。

「僕のような仕事というのは、今、目の前にあるミッションに向き合ってどれだけ結果を残すかということしかないんです。そのミッションを成し遂げる過程で、僕自身も成長する」

彼の言葉を聞いて、自分も同じだと思わず膝を打ちました。私自身、目の前のことを必死でこなしているうちに漫画家として40年が過ぎたのです。

これからも玉塚さんはこうした考えで突き進んでいくことでしょう。被災地へも自らが乗り込んだように、玉塚さんが「行動する会長」の新たな像をつくり上げることを楽しみにしています。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、91年『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞、2003年『黄昏流星群』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年紫綬褒章受章。
(田崎健太=構成 門間新弥=撮影(対談) 時事通信フォト=写真)
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