視点設定はどのように役立つか
効果的な視点設定は、外部の競争勢力はもちろん、社員のニーズも理解する有能なリーダーと結びつけて語られることが多い。
視点設定は、われわれに自分自身の主張や関心を手放すことなく相手の関心を認識させることによって、プラスの効果を達成する。ニューヨーク州立大学バッファロー校の名誉教授、ディーン・プルーイットの「効果的な交渉の二重関心モデル」によれば、自分だけに注目するアプローチは攻撃的でかたくなな行動につながり、相手だけに注目するアプローチは自己破壊的な譲歩を促す。それに対し、自分に対する関心と相手に対する関心のバランスをとるアプローチは、創造的な問題解決策につながる。こうした理由から、積極的な視点設定は交渉を成立させるのに役立ち、価値のパイを拡大し、さらにはあなたがより大きな価値を設定することも可能にしてくれる。ただし、これは他者に共感を持つことと同じではない。実際、共感を持ちすぎると、ネゴシエーターは簡単に譲歩しすぎてしまう。
何が、相手の隠れた関心、動機、ニーズなのか
視点設定は習得できる技能でもある。交渉前に、また交渉中にも、3つの簡単な問い――何が、どのような方法で、なぜ(what, how, and why)――を考えることで、あなたは自分の交渉パフォーマンスを高めることができるのだ。
何が相手を交渉の席につかせているのか。相手の視点をより深く理解すれば、あなたはそこからヒントを得て、自分自身の利益も満たす新しい提案をオファーすることができる。
これら3つの問いを考えることによって相手の視点を理解するよう指示されたネゴシエーターは、行き詰まりを回避して、双方のニーズを満たす創造的な解決策に至る割合が高かった。
視点設定は、ネゴシエーターが相手の優先事項を認識することによって価値を創造するのにも役立つ。たとえば、視点設定の技能を習得しているリクルーターは、優先事項について質問することで、採用候補者が職務内容には大きな関心を持っているが、リクルーターにとってはきわめて重要な問題である勤務地にはさほど関心がないことに気づくかもしれない。その場合にはリクルーターは、双方が満足できる効率のよいトレードオフ――候補者が望む職務と引き換えにリクルーターが望む勤務地に行ってもらう――をオファーすることができる。