たとえば3000万円を金利2%・返済期間35年で借り入れた場合、その間の利息が付くため総返済額は約4174万円になる。毎月返済額は約9万9400円(ボーナス時加算なし)。10年後に約100万円を繰り上げ返済した場合で比較しよう。
返済期間短縮型では返済期間が16カ月短縮され、カットされる利息は約61万円。対して返済額軽減型では、軽減される毎月の返済額は約4200円、カットされる利息は約27万円だ。
結果として、100万円の投資で61万円(返済期間短縮型)、27万円(返済額軽減型)の利益が出たことになる。これを仮に1年間分の利回りに換算してみると、それぞれ2.57%、1.08%程度。現在、人気の個人向け国債の利回り0.05%と比べても、非常にお得度の高い安全な投資商品を購入した、ということになる。
経済効果は返済期間短縮型のほうが大きく、完済時期も早まって老後の不安対策にもなるなどメリットが大きい。
しかし、現在、またこの先、毎月の返済が苦しくなりそうなら、返済額軽減型が向く。給料が減る、教育費が増える、修繕積立金が値上がりする、住宅ローン控除がもうすぐ終わるなど、家計の先行きを見通してどちらかに決めるといいだろう。
とはいえ、手元資金が乏しいのも危険なので、40代以上は最低でも生活費の6カ月分(30代までは4カ月分でも可)以上、さらに教育資金をキープしたい。
繰り上げ返済は少額でも構わない。利息軽減、債務縮小の安心感を味わうと、またしようという気になるはずだ。
※1 出所:厚生労働省「夏季一時金妥結状況の推移」(2016年は日本経済新聞「賃金動向調査」)
※2 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」
(構成=高橋晴美)