日本の中間所得層の個人資産は、自宅不動産の占める割合が大きい。売却すればまとまった資金を手にできるが、自宅には特別のこだわりを持ち、住み慣れた場所から離れたくないという気持ちも強い。
住み続けながら自宅を現金化できないか――。そんな願いを叶えてくれるのが「リバースモーゲージ(不動産担保ローン)」だ。実際には、契約者が自宅を担保にして借り入れを受けて、亡くなった時点で精算する仕組み。相続人が借入分を返済してもいいし、自宅を処分して返済してもいい。
現在、「リバースモーゲージ」には、大きく分けて2つの種類がある。公的制度である「不動産担保型生活資金」と民間金融機関が扱う商品だ。前者は、戸建て住宅が対象で土地評価額の7割程度まで借り入れが受けられ、金利も年0.95%と低い。ただしこの制度は低所得者向けのものなので、所得が「市町村税非課税世帯」または「均等割課税程度の世帯」などに該当しないと利用できない。
一方、民間金融機関の商品は土地評価額に対して融資を受けられる割合が低く、金利も高めの代わりに対象が広いのが特徴だ。たとえば、東京スター銀行の新型リバースモーゲージ「充実人生」は、融資限度額は不動産評価額(※)の5割程度で、8月の金利は年2.911%。首都圏および大阪市、京都市、神戸市の一部であれば、戸建てだけでなくマンションも対象になる。この商品の場合、契約しても普通預金口座に残高があれば、その分には金利がかからない「預金連動型」の仕組みが取り入れられているのも特徴だ。
よって、公的年金など安定収入はあるが、セカンドライフでもゆとりのある生活を送りたいというケースでは、民間金融機関の商品を検討する価値はある。また、耐震改修したい、子どもに生前贈与をしたい、しかし預貯金を取り崩すのは不安、など、様々な用途の資金準備に利用できる。