金価格の上昇が続いている。
年初1082ドルだった金価格は、約25%上昇し、1300ドル台へ(2016年8月5日現在)。とくに1~3月には16%値上がりした。
「有事の金」という言葉があるように、経済危機や政情リスクが高まったときには金が買われるのが常である。これを「イベント型相場」といい、オバマ大統領がシリア空爆を表明した13年8月には金価格が高騰し、発言を撤回すると急落、14年3月のロシアによるクリミア併合前後も同様に高騰、急落した。
では今年、比較的長期のトレンドとして上昇が続いているのはなぜか。それは、「マクロ型」の上昇である。大きな危機は発生しなくても、経済環境への不安が高まると、世界的に金価格は高騰する。
日本では金融緩和が続けられているが、思うような効果は得られていない。
米国は利上げに転じたが、今年四回予定していた追加利上げをここまで見送っている。米国の株価は上がっているが、企業が自社株買いをして株の価値を高めているだけ。
欧州でも緩和が続いているのはご存じのとおりである。
とくに経済規模が大きい単一国家である日本が今年マイナス金利政策を採用し、国債利回りもマイナスに落ち込んだことは、大きなインパクトを金市場に与えた。米国もそうならないとは限らない、との危惧もある。
つまり、株も債券も積極買いできない環境で、リスクヘッジのために金を買う、マイナス金利では利息のない金のデメリットも気にしないという、「構造的な金買い」が起きている。イベント型相場に比べて明確な答えが見えない分、トレンドが長く続きやすい。