悔いのない泳ぎを
経費については、この日の激励会に集まった人や支援団体などの寄付でおおくを賄っていく計画である。まさに応援する人々の善意の具現化といってもよい。その応援を力に変え、成田選手はリオに向かう。
北京パラリンピックで障がいによるクラスが変わって、リオパラリンピックも成田選手にとっては厳しい状況ではある。でも、闘志と挑戦意欲は衰えない。
「悔いのない泳ぎをしてきたい。決勝に残って、自分のベスト記録を出せたら、自分に対しては、一番の金メダルをあげられることになるのかなと思っています」
幾多の苦難を乗り越えてきた成田選手のひたむきな泳ぎは見る人の心を揺さぶる。「チーム成田」の挑戦もまた、おそらくスポーツファンやトレーナー、ドクターたちの励みとなろう。人生は希望に満ち満ちている。
松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。