さらに、そうした提案をあえて周りに人がいるときに行うという手もあります。そこで認めれば上司は「新しい提案を受け入れられる人」「フェアに物事を判断できる人」というように見えます。上司としても悪い気持ちはしないでしょうし、チームとして盛り上がるきっかけになるかもしれません。

一方、より正しい内容であっても人から言われるのを嫌がる上司にはどうすればいいでしょうか。ひとつの方法として、「提案」ではなく「相談」というやり方があります。人は頼られるとうれしくなるものです。このやり方では、あえて結論は見せません。提案したいことに上司が行き着くように判断材料を見せ、「こんな状況なんですが、どうしたらいいでしょうか」と相談します。そして「そりゃ、○○だろう」と上司自身に言ってもらいます。それはあなた自身が狙っている結論ですから、「やはりそうですよね」と反応する。「しらじらしいな」と思われるかもしれませんが、結局、目的を果たせるなら、その方法が最善ではないでしょうか。

上司の「やりたい」とすりあわせるコツ

人にはほかにもいろいろな「スイッチ」があります。あらかじめ整理しておくと、仕事がよりスムーズに進みます。私はそうした「スイッチ」を大まかに「やれる・やりたい・やらざるをえない」という3つに分けています。この3つの条件がそろったとき、人が何かをする確率が高くなるのです。

たとえば前述の「状況が変わった」は上司に「やれる」と思わせ、提案そのものがよければ「やりたい」とも思わせることができます。提案そのものがよいだけでは、上司のプライドが「やりたくない」とブレーキを踏ませてしまいます。それを取り除くことができれば、「やれる」と思わせることは可能です。

なお一般的には「やらざるをえない」という状況に追い込むよりも、「やりたい」「やれる」と思える状況に仕向けるほうがいいでしょう。そういう作戦を「自分のやりたいこと」を実現するために立てられれば、お互い気持ちよく仕事ができます。